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「燃える」ではなく「燃ゆる」というくらいだから、やはり文芸的な作品であろうし、「肖像画」という時代的なアートの意味付け、すなわちその人の内面までも醸し出すまでは画家も対象も納得しないという世界感も文芸的であると思う。 ハッとさせられるシーンも多い。ラスト近くで、屋敷の台所に「男」の人夫がチラッと出るのだが、その強烈な違和感・・・、冒頭の船シーン以降、今までの時間全てが女性だけだったのに改めて気づかされる。女性同士の恋愛というセンシティブな物語が、極めて自然に表出されていたことにここで気付く。巧さを感じてしまった。 そしてラストシーンである。ヴィヴァルディの「四季」の「夏」第3楽章であるが、突然のフルオーケストラに、そういえば映画音楽らしい音楽が無かったことに驚くと同時に、その数分間の驚異的長回し、台詞なし、役者一人・・・の圧巻で閉じられる。 正直、日ごろ性急なアクション映画を観なれてしまっているからか、少し退屈な映画ではあったが、いずれのシーンも非常に美しいことは確かで、2時間たっぷりとクラシカルな「動く絵画」を堪能したという感じの映画だと思う。
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