
Till
3.0

Pig
Movies ・ 2021
Avg 3.2
『クワイエット・プレイス』の3作目(スピンオフ)の監督を務めることが決定しているマイケル・サルノスキの長編デビュー作となったドラマ映画。 オレゴンの山奥で、孤独な男ロブはトリュフ狩りをする忠実なブタと住んでいた。ロブはトリュフバイヤーのアミールにトリュフを売り渡して生計を立てていたが、ある日何者かに大切なブタを強奪されてしまう。ロブはブタを奪還するためポートランドの街に向かい、アミールと共に手がかりを捜すが…。 「俺のブタを返せ!」「ニコラス・ケイジが愛するブタを奪還する、慟哭のリベンジ・スリラー!」なんて宣伝されているものだから、これはバイオレンス描写満載のニコケイ版ジョン・ウィックかと思いきや、まさかしんみり系の人間ドラマだったとは。個人的に『カラー・アウト・オブ・スペース』や『ウィリーズ・ワンダーランド』などのB級映画俳優としての振り切ったニコラス・ケイジがお気に入りだったので、正直コレジャナイ感が凄かったし、あまりに想像と違い過ぎて困惑してしまった。 そもそもニコラス・ケイジがB級映画に出演しまくっていたのは単なる金儲けのためではなく、自身の浪費癖ゆえに抱えてしまった多額の借金を返済するため(金目当てであることには変わりないけど)。その借金を無事に返済し終えた彼にはようやく作品を選ぶ余裕がうまれてきたようで、ニコラス・ケイジ自身も後世に残したい3本の映画のひとつとして本作を挙げており、主演だけでなく製作にまで名を連ねているあたりからも本作への思い入れの強さがうかがえる。事実、本作での彼の演技は絶賛されており、演技派俳優ニコラス・ケイジとしての見応えは抜群。作品自体の評価も非常に高く、ロッテン・トマトで97%のフレッシュを獲得しているだけでなく、元アメリカ大統領のバラク・オバマ氏が2021年度お気に入りの映画12本に本作を選んでいる。 確かに本作の喪失と再生の物語には胸を打たれる部分もあったが、正直「ブタを取り返す」という展開以外はあまりひねりがなく、途中で明らかになるロブやアミールの過去も予想の範囲内。それに既述したように、これは私のリサーチ不足が悪いのかもしれないが(宣伝の仕方も作為的だと思うけど)、私が期待していたジャンルの作品ではなかったのでイマイチ乗り切れなかった。 本作はあまりハマらなかったが、来年の3月に日本公開が決定している『マッシブ・タレント(原題:The Unbearable Weight of Massive Talent)』では、ニコラス・ケイジが“経済的に破綻寸前の俳優ニック・ケイジ”を演じるというめちゃめちゃ面白そうな内容なので、そちらには期待したいです。