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dreamer

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3 years ago

4.5


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Sword of Vengence

Movies ・ 1972

Avg 3.8

"劇画の映画化の時代の到来を決定づけた、若山富三郎主演の痛快娯楽時代劇の傑作 「子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる」" この映画「子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる」は、小池一夫原作、小島剛夕作画により、1970年9月より「漫画アクション」に連載された劇画の映画化作品で、柳生一族の手により、妻と公儀介錯人の役職を失った、主人公の拝一刀と、その一子・大五郎のさすらいの旅路と、柳生一族との闘いを描いた大河作品で、映画化作品としてシリーズ化され、合計6本製作され、この映画は、その記念すべきシリーズ第1作目となる作品です。 この「子連れ狼」の映像化は、映画、TVで数多くの作品が作られましたが、最初に映像化され大ヒットを記録したのがこの作品で、他のどの「子連れ狼」よりも、はるかに群を抜いたクオリティの高い作品になっていると思います。 主演の拝一刀には、この原作の劇画と主役の拝一刀のキャラクターに惚れ込んだ若山富三郎が、原作者の小池一夫に直談判し、彼の目の前で豪快で華麗な殺陣を披露して、この役を勝ち取ったというエピソードが残されています。 小池一夫が思い描く拝一刀は、もう少し精悍なイメージで別の役者を希望していたそうですが、若山富三郎のこの役に賭ける熱意と、あまりの殺陣の凄さに感服して、彼にこの役を任せようと決断したそうです。若山富三郎は、当時の日本の現役の俳優の中では、殺陣と立ち回りにおいて、他の追随を許さぬ程の凄い腕前の持ち主でしたので、当然の起用であり、また彼が作り上げた暗い翳りを帯びた、虚無的な拝一刀像は、彼でしか表現出来なかったと思います。 そして、実弟の勝新太郎が大映倒産後、必然的に自社の勝プロダクションで映画製作を積極的に行ない、この映画のプロデュースをする事になり、監督には勝新太郎の「座頭市」シリーズのうちの1作目の「座頭市物語」をはじめ合計6作を監督し、市川雷蔵の「眠狂四郎」シリーズにも関わった、大映京都のエース、三隅研次が起用され、勝プロの製作となり、東宝が配給するという興業形態で公開され、大ヒットを記録しました。 この映画は"影の深い孤独なヒーロー"が主人公であり、加えて劇画特有の派手なアクションと極彩色の映像とスプラッター描写の実写化という点でも、三隅研次監督以外の適任者はいなかっただろうと思います。 市川雷蔵主演の「斬る」で大胆な人体真っ二つの殺陣をみせた三隅研次監督は、この映画でも噴水のような鮮血や、豪快な首切断、更には脚を斬られた侍が倒れると脛から下が残るという、極端に劇画チックな描写まで乗りまくって演出をしていて、あらためて三隅研次監督の腕前に驚愕してしまいます。 そして、このシリーズでお馴染みの大五郎を乗せた乳母車を殺人マシーンに変え、重戦車の如く、怒涛の迫力で押しまくる若山富三郎の凄みのあるハードな殺陣も、我々観る者の度肝を抜いてしまいます。