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2019年79本目は父と息子、それぞれがドラッグ中毒からの再生について記した著書をベースに描かれた『ビューティフルボーイ』です。 ニックとデヴィットの関係性は一見良好に見えますが、どこか心の底では繋がっていない様に映ります。物書きを目指すニックにとって父は尊敬の対象であると同時に、常に「抑圧」「管理」の象徴でした。 例えば冒頭、デヴィットはドラッグ中毒だと判明したニックを車にのせていきなり施設へと連れていきます。私の会社にも資料を提出すると自分では目も通さず、それを専門の人間に丸投げする上司がいますが、私はそういう人間は絶対に信頼しません。本気で理解しよう、学ぼうとする気がないからです。デヴィットは早い段階で息子と向き合うことを諦めたのです。しかし、それに気づいているのはニック本人だけでした。 そして劇中で幾度も浴びせられる「すべてに」という言葉の重さ。感動的なシーンに映りますけど、ニックの顔はまるで晴れません。この言葉が「(僕の望む)すべて」ではなく「(父が僕に期待する)すべて」だとわかっているからです。 同じフレーズを聞くたび、彼は何度失望したでしょう。 無限に続く二人の行き違いは見ていて非常に心苦しく、想像以上の険しさです。何しろこれまで積み上げてきた「すべて」を超えて愛してあげなければならないのですから。果たして二人が歩いた道の先はどうなったのか…?皆さんの目で確かめて頂きたいと思います。
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