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2020年60本目は、新しい視点でゾンビ映画というジャンルを切り取った意欲作『キュアード』。 ------------------------------------------------------------ 本作ではゾンビウィルスが終息した後の世界を描き、ワクチンによってゾンビから真人間に戻った主人公の苦悩と葛藤が描かれます。ゾンビとして人を殺めた過去を持つ人間に世間の風当たりは冷たく、差別や偏見から隠れるように暮らします。危機から立ち直った後に直面する「モラルハザード」に、より根深い人間の闇を感じます。 ------------------------------------------------------------ ただ本作の場合、せっかくの面白そうな設定をちゃんと活かせているかと言えば疑問で、結局ただのゾンビ映画になっているのは否めません。特に中盤以降は、フラストレーションを溜め込んだ感染者が暴徒と化すお決まりの展開。普通のゾンビ映画で起こる序盤の下りを後ろに持ってきただけで、何だか順番を入れ替えただけにしか感じられないのが残念です。 ------------------------------------------------------------ このコロナ禍の状況を踏まえると、沈静化した後の教訓を提示できるポテンシャルも秘めてたはずなんですが惜しい限りです。いっそゾンビの要素を完璧に削り落として、感染した人々が周囲の助けを借りながら日常を取り戻していく様子を描いたら良かったかも。まぁ、それだとジャンルが「ドラマ」に変わって監督のやりたいことじゃなくなっちゃうんでしょうけど。
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