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Tsukky

Tsukky

2 years ago

5.0


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Small, Slow but Steady

Movies ・ 2022

Avg 3.5

Dec 25, 2022.

個人的に今年の邦画で間違いなくベストです。 鑑賞後に心が満たされるような、それでいてポッカリと穴が開けられたようなそんな気持ちにさせられる名作だと思います。監督が、映画を観終わった後に普段見慣れた街が違って見えるようにしたかったとおっしゃっていましたが、まさにそんな1作だと思いました。 主演の岸井ゆきのさんの演技は、台詞こそありませんが、目の動きや表情、些細な動きで考えや感情が伝わってきました。 16mmフィルムで撮られた映像の美しさにも感動しました。現代の普通の日常でも、切り取る部分と16mmの淡い映像とが合わさると、こうも幻想的で美しく描けるのかと驚きました。 また、ろう者のケイコの存在と、環境音が一般的な映画より大きく流れることで、日常の生活にここまで音が溢れているのかということに気付かされるというのもこの映画の大きな魅力だと思います。 この作品で最も印象に残ったのは、第三者の立場でしかケイコを見れないようにしているということです。作品通して音に溢れた世界でケイコが生きている様子を観ているので、ケイコの気持ちや考えや苦悩は想像するしかないようになっています。音の無いシーンを入れてケイコ視点を描くという方法もあるのに、それをせずにケイコとの距離間を保っていることが、この作品独特の空白感、余白感を出していると感じました。 長々書きましたが、海外でも様々な賞にノミネートされ評価の高い作品なので、ドライブマイカーのように沢山の人に観られる作品になって欲しいと思いました。