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主人公の心情の描写が丁寧な、骨太のドキュメンタリー映画。 主人公・サルーが貧しくも兄を慕っていた幼少期から、迷子になる過程、オーストラリアに養子に入る過程までとても丁寧に描かれている。その分、故郷の家族への思いや、それとオーストラリアの家族との間にある、心の葛藤に重みがある。また特に、慕っていた兄グドゥへの思いが、多用されているフラッシュバックを通して次々と心に刺さってくるような、そんな気持ちになる。 加えて、インドの実情のジャーナリズムがこの映画の重みをとても増しているところ。年に8万人もの子供が家族と生き別れになっている事実は、この映画の随所に描かれるシーンでそのリアリティが伝わってくる。エンドにまとめられたその事実や実際の写真・映像、映画タイトルの所以で、他の映画にない重みのある締めになっている。 反面、養子の全てを受け入れたスーの人物描写がもっと欲しかった。もう1人の主人公とも言える、難しい心情の登場人物だったので。2時間の映画ではこれが限界なんだろうけど。 比較対照が芸術的なのがこの映画の密かな側面。とにかく貧困&困難の連続だった幼少期から、20〜何年後には、PCのグーグルマップで故郷を探す環境になるのだから。それが事実である事がスゴイ。 総じて、これは文句なしの“心揺さぶられる”映画。久しぶりにいい映画を見た気分!
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