Comment
とにかくマリオン・コティヤールを美しく儚げに撮ることに熱中した映画で、予想とはだいぶ違った一作でした。個人的にはヒロインが移民としてアメリカにやってきて、身分の違いや境遇に苦しみながらも、妹を救うために必死に努力する涙ぐましいドラマを期待していました。 ところが本作は彼女をひたすら周りの男が「美しい」「女神だ」と誉めそやして媚びへつらい、勝手に尽くしまくるせいで、主人公エヴァの困難な状況が全く共感できないものになっています。確かに娼婦に身を落とさざるを得なかったことは悲劇でしかありませんが、この監督はそうしたエヴァのやらしさ、もっと言えば「穢れ」を直接的に見せようとしないのです。 話の大筋はホアキン・フェニックスとジェレミー・レナーとの三角関係に集中したメロドラマと化し、移民という深刻な問題を取り上げた世界観にはあまりにそぐわないスケールです。マリオン・コティヤールに惚れ込んでいるのは他の誰でもないジェームズ・グレイ監督その人で、同じ信念を分かつファン層以外には理解しがたい内容になっています。
2 likes0 replies