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第二次世界大戦が終わった翌年、1946年の作品。 本国は敵襲を受けることもなく、故郷に帰れば家だけは間違いなくあるという状況下のアメリカである。日本のように敗戦の末に、着のみ着のままで焦土化した故国に帰って来たのとはまるで違う。 そこで三人の復員兵の所属・階級・年齢を分け、それぞれの “復員” をテーマにした物語になっている。 故郷に帰る飛行機の中から眺める景色、“普通” に戻れる感動、そして安堵や不安からくる“ためらい”。 そんな人間心理の微妙に変化・進展してゆく様子を、細々と観察してゆく所がこの映画の醍醐味。 演出として特徴的なのは、ショット数を減らし、二人ないし、ぞれ以上の登場人物の会話を、一画面に入れてしまう所。人物の配置やカメラの構図を、重ね合わせ・奥行きの絵で見せ、劇的要素を加え、観客の心理を画面から放さない。 例を挙げよう。 デパート売り場での店員や店長、そして訪ねた戦友仲間とその家族の場面。 あるいは銀行所員の一家に帰って来た時の、本人と両手を負傷した戦友との場面などがそうである。中には、自宅へ帰る車窓から見える外の景色。画面の左上部にルームミラーに映る彼らの表情を見せつつなんて場面もあった。 これらは、同一画面でも物語の状況・人物の劇的要素があるため、ショット割で主人公の感情を示すのと同じ効果がある。 物語は、時間・状況・環境が変わっても、変わらぬ愛情を育てる者もいれば、これを機に新しい未来に賭けようとする人間もいる、といった最後を迎える。 様々な意義・主張を積み重ね、過まった闘いではなかったとする〔アメリカ国の正義への忠誠心~それは朝鮮・ベトナムへの参戦の道〕を含みつつ、戦争後の社会再建の第一歩(復員兵自身とその人達を迎える側の両方の)を告げた映画であった。
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