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えりか

えりか

3 years ago

3.5


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The Little Things

Movies ・ 2021

Avg 3.0

「little things」とは。この映画ではいろんな意味を孕んでいる。 ・ ミステリーやサスペンスを期待して観ると、期待はずれかモヤモヤしたまま終わってしまうので注意。なんだろう、この映画のジャンルは…サスペンスヒューマンドラマ?? ・ 個人的には心地よいモヤッと感のラストでした。 ・ ・ ・ ネタバレあり ・ ・ ・ ★最初に捕まった性犯罪の前科者はなぜ自死したか? →あんま明確になってないんだけど、キッカケは「メアリー・ロバーツ」だろうから、そこから予想するに、事件当時、まったく身に覚えのないことで、余程酷い尋問を受けたんじゃないだろうか。また同じくらい心身ともにズタズタにされるくらいなら、死んだ方がマシってくらいに。 もしそうだとしたら、主人公はやることエグすぎる。オチを知ると殊更、よく「メアリー・ロバーツ」という言葉で揺さぶりかけようとか思えたな、と。自分でも頭おかしいって言ってたけど、ほんとにそう。 ・ ★主人公が囚われていたもの 序盤に「事件は自分のことになる」って言ってたけど、それは元々正義感でそうなっていた部分もあったんだろうが、もはやそんな純粋な理由はどこかへ行ってしまっている。検死員にも言われてたけど。 事件ではなく、自分のしでかしたことに囚われているので、まぁそりゃ「事件は終わってない」というか終わらせられない。 事件を終わらせたいのは誰のためか。後半で本人もいってたけど、もはや被害者のためじゃなくて、自分のため。じゃなきゃここまでは妄執してなかったかも。 ・ ★間違ってなかった上司たち 「あの男と関わるな」って上司の忠告はある意味間違ってなかった。。 主人公に関わらなければ、たとえ正義感から事件に固執してもあんな末路にまではならなかったんじゃないかな…。 ・ ★なぜ主人公は偽のバレッタを送ったか? 過去が未来になり、未来が過去に。未来と繋がって過去と繋がり、そしてまた未来が…繋がってしまった。 主人公は自分はヤベェって自覚はありつつ、俺の推理は間違ってないはずだって小さなことを見落として、小さなことに固執していた。個人的には、自分のそんな行動も、ほんとはわかっていたはずだと思う。 なので、あのバレッタは若い彼の希望のためとかよりも、自分のためというところが大きいのではないか。 犯人は違うのかもって節はあったのに見ないふりをしたこと・若い彼を深く巻き込んで人殺しにしてしまったこと・同じ罪を負わせてしまったという、自分の罪悪感を慰めるために。(主人公は悪意なき一般人を誤射して隠蔽してしまったので、比べちゃいけないけど、同じヒト1人とはいえ同じ罪なのか…??って気もする) だって犯人がほんとは別人で事件が再発すれば、嘘はバレてしまうのに、果たしてあのバレッタは救いになります?っていう。 メモについては嘘じゃないので、バレッタよりちゃんと優しさを感じた。信仰心の強い彼が「被害者にとって我々は天使だ」という言葉に囚われないように。大切な信仰心が彼を苦しめるものにならないように。少しでも自分と同じ苦しみに囚われないように。 ・ ★犯人じゃないことは家に忍び込んだ時点で気づいていたのでは? 主人公は家捜しした時点で、ほんとはわかってたんじゃないかと思う。元々は絶対犯人だって思っていたんだろうけど、そうじゃない可能性が出てきたときに、そう思い込みたい自分が勝っちゃったというか。 スパーマは犯人しか知りえないっぽいことは知ってたけど、それは警察の無線を傍受してたからなんだろう。小さいことにこだわる主人公がその可能性に気づいていなかった訳がない。無意識かもしれないけど、自分に都合の良い小さいことにばかり目を向け、自分に都合の悪い小さいことは無視した。 盗難届だって結局出ていたし、かつての事件5日後に引っ越していたとかいう状況証拠とも言えない事実を二人して「良いニュース」って言ってるのがとてもヤバかった。 スパーマはたぶんほんとに拗らせたただの犯罪マニアだった気がする。煽りまくってたのも愉快だからしてただけ、怪しげな行動も自分が楽しいからしてただけの人。それでうっかり調子に乗りすぎてぶん殴られちゃった。 若い彼もたぶんそれはきっと心のどこかでわかってる。 ・ ★目の奥に宿るもの 主人公のはもう純粋な善じゃなかったけど、若い彼も、自分のプライドと焦燥感と、主人公と一緒にいることで視野狭窄に陥って、同じになっちゃった。 心身磨耗してなきゃ耐えたのかもしれないけど、穴堀と言葉攻めで削られる前段階でもうマトモじゃなかった気がする。 もともと良くも悪くも正義感が強い。入れ込みすぎて見誤ってしまった。最後の 意気消沈から浮上しても、遅かれ早かれ色んなことに気づいて、一生抱え込んで悩んでしまう性格だと思う。 ・ ★ポンコツ女刑事ちゃん ポンコツ女刑事がマジでポンコツ過ぎて若い彼と同じ憤りを感じた。いや、容疑者が来る日ってわかってて、なに目撃者うろつかせてんだよ ・ ★迂闊な二人 感情的になってる若いのを一人だけ置いていく主人公も、一人で電話に出る若い彼も、迂闊すぎるんだよ!! ご飯は食べよう、ちゃんと寝よう。心身健康じゃないと、正常な判断はできないんだよ… ・ ★エグい皮肉 小さなことからバレるって言いながら、主人公が隠しているものはあまりに大きくて、エグい皮肉だなと思った。 ・ ★いずれにせよ… 若い彼は犯人だって思い込もうとしてたけど、だったら殺してもOKだったかっていうと違う。 バレッタが本物だったとしても、確実に本当の犯人だったとしても、いずれにせよ罪悪感は違う形で襲ってくるはず。 ・ ★主人公はわりとガチで怖い 空の工具箱も燃やす。残りのバレッタも燃やす。些細なことから破滅するから。こえー。 あれによって封印したのは若い彼の罪だけではない、そのさらに奥にある自分の罪も含めて、燃やして無かったことにしようとしたんじゃなかろうか。