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Till

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6 years ago

4.5


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Life of Pi

Movies ・ 2012

Avg 3.3

ヤン・マーテルの小説『パイの物語』を原作とした映画。 第85回アカデミー賞で監督賞、作曲賞、撮影賞、視覚効果賞の四部門を受賞しているだけあって、最新CG技術を駆使した神秘的な映像がひたすらに美しい。映画に登場する動物はトラを含めほぼすべてCGらしいが、その圧倒的な映像技術のおかげで、まったく違和感を感じない。 ただ、この作品を「少年とトラの友情&冒険物語」とか、後に公開された『ジャングル・ブック』のような映像重視で中身スカスカの子供向け映画だと勘違いしている人も多いと思うが、本作はそんな薄っぺらいものではない。その幻想的な映像美の裏に隠されたテーマは極めて深刻で、悲惨で、現実的であり、子供には到底理解できない深みがある。序盤は主人公パイの生い立ちや宗教観など漂流に何の関係もない様子が描かれていたり、船に乗ったときもその船内での乗客とのやり取りがあったりなど、無駄に思えてしまう場面があるのだが、それらのシーンにもちゃんと意味があり、ラストにしっかり活かされている。 宗教が深く関連している映画なのだが、決して観客を置いていくような偏った思想ではなく、【生きる】という誰しもに共通する普遍的なメッセージ性がある。人間の【生】のためには必ず他の生物の【死】が伴うわけで、それを当然のことだと認識せずに日々感謝しながら生きていかないといけないなと、極限の状況に立たされたパイの姿を見て、なんだかいろいろと考えさせられた。それから、劇中で述べられる宗教的な思想や、様々なメタファーを紐解いて考察することができるのも本作の魅力の一つで、特にトラの名前である「リチャード・パーカー」について調べてみるのも面白い。ただ、視聴前に知ってしまうと完全にネダバレになってしまう情報なので、そこは注意が必要。 おそらく「映像が綺麗だから」という理由で電気屋のテレビコーナーで流されていたが、「そんな安易な理由で流してほしくない!」と腹立たしく思ってしまうほど素晴らしい作品でした。