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行けども行けども恐らく見つかることのない「ここではないどこか」を目指して刹那的な「今」を生きる若者を『パーマネント・バケーション』から描き続けてきた監督。放浪する人生の中で「ここではないどこか」への漠然とした希望を滲ませてきたけれど、『デッド・マン』『ゴースト・ドッグ』では死生観を取り入れ、これまでのキャラクターたちが探し続けてきた「ここではないどこか」を「彼方」とダブらせることで、「死による救済」に舵を切る。 そして『ブロークン・フラワーズ』で「ここではないどこか」や「彼方」への希望ではなく、刹那的楽しさの積み重ねで成り立った永遠の休暇的な人生を送ってきた故に迎える「孤独」を描き、自身の過去を顧みることで「今」を見つめ直すという過去作のキャラクターたちへのアンサーを打ち出した。 『ブロークン・フラワーズ』の次は『リミッツ・オブ・コントロール』。すっ飛ばしてコレ見たから見当違いのこと言ってるかもだけど、過去作へのアンサーだった『ブロークン・フラワーズ』に対する更なるアンサーを打ち出したのが本作だと思った。 もともと死への旅路のイメージは初作の『パーマネント・バケーション』から滲ませていたのだけど、『デッド・マン』から露骨になり、本作でも同様に死のイメージが付き纏う。 主人公のアダムは吸血鬼で、葬送曲ばかりを作り、恐らく自殺用だと思われる弾丸を作らせる。世間から距離を取り、社会の在り方を嘆き、ただ生きながらえる吸血鬼のイメージは過去作の流浪の若者たちとダブる(ゾンビの方をダブらせてるかもだけど…)。永遠に続く休暇(パーマネントバケーション)を終わらせ、死の救済を考え始める点もまた過去作の流れを踏襲するのだけど、本作は強固な「関係性」を提示して、更には「生」に対する荒々しい欲求をも描いているのが過去作とは大きく違うところ。タイトル通り、その「生」へと向けられる力強さが過去作への何よりのアンサーだと思った。だから『ストレンジャー・ザン・パラダイス』と少し似てるのかも。 そして「生」とは何か、自分が歩んできた「生」の意味とは何か。ただ命があることが「生」ではなく「勝利」でもない。芸術家である映画監督としての自身への言及でもあり、賛美(戒め?)でもあるのだろう本作の展開はジャームッシュ監督のひとつの到達点のように感じた。 ただコレはあんまり好きじゃなかった…😅今のところベスト5は『ナイト・オン・ザ・プラネット』『ブロークン・フラワーズ』『ゴースト・ドッグ』『ストレンジャー・ザン・パラダイス』『ダウン・バイ・ロー』の順かな🤔『デッド・ドント・ダイ』の公開がいつになるかわかんないから、次の『パターソン』と飛ばしちゃった『リミッツ・オブ・コントロール』も見る時間取れるし、ある意味助かったかも(笑)
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