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重くて息苦しい雨の夜。あんこはとてつもなく甘そうで、がらがらの映画館でかかっている歴史映画はなかなか終わりそうもなかった。どこかで蟹を食べてるきたない音がする。 居場所の喪失を恐れるかのごとく磁石のようにくっつきあうひとびと。 漂う不思議な違和感はあるいは、わたしたち(彼)だけが感じているのだろうか。 ただ寂寥感はやがて共鳴し、彼女の不規則な足音とスクリーンを見つめる俳優の光るひとつぶの涙にそれぞれのものがたりを想うのだった。 ひとびとは孤独を埋め合わせ、そんな不快と紙一重である気持ちよさがじんわりとしのびこんでくる。 色々なストレスを感じてしまうためにあまり行かなくなってしまった映画館だけれど、煩わしいようなことも含めて『映画』なのかもな、なんてまた劇場の空気を吸いたくなるような心地にさせれくれた、哀愁漂う優しい時間だった。
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