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凄い映画。ひたすら暗く、重たい。そして非常にリアルだ。久しぶりに凄い映画を観たという感じがする。 しかし、エンタメ度はゼロなので、面白い映画を観たい人は観ない方が良いと思う。 冒頭の橋のシーンが強烈だ。一方からナチス軍、相対する一方からはソ連の赤軍から侵攻を受けるという、ポーランドのとてつもない悲劇がまず提示される。 次に事件が起こる前までを、収容所とその家族の描写を交互に描く。そして事件が起こってからの家族の苦悩や悲しみが描かれ、ラスト20分の「事件」そのものの描写へ回想する。 役者は演じているのであるが、大袈裟な立ち振る舞いなど皆無で、ひたすらリアリズムで押し切られる。社会派の大巨匠であるワイダの真骨頂ともいえ、その意味では彼の集大成のような映画だとも思う。 それにしてもラスト20分が凄まじい。淡々としかも整然と行われる殺戮、押し寄せる土砂の映像が、とてつもなくリアルである。リアルであるがゆえに、恐怖とやるせなさ、絶望感に震えてしまう。 ポーランドの大作曲家ペンデレッキが付けた音楽は、どれもこれも素晴らしく、暗く、悲しいが、エンドロールで彼が選んだ音楽は、「無音」である。もはやそれしかないと思った。
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