
cocoa

By the Grace of God
Avg 3.5
フランス、リヨンに暮らす40歳のアレクサンドル(メルヴィル・プポー)。 仕事も家庭も恵まれている彼だったが、30年前に性的虐待をしたプレナ神父がまたリヨンに戻り子ども達に教えていると知る。 新たに被害者を出さないために、教会側にも訴えたアレクサンドルが同じ被害者達と手を組んで告訴に踏み切る…そんなお話。 カトリック教会の大事件としてフランスで騒がれた実話ベースの作品です。 そして今現在も係争中の事件なので、オゾン監督は世界に知らしめる大きな役割もあり、全編に渡って真摯に作られており、被害者側の気持ちを充分に描いた内容でした。 まず、アレクサンドルを演じたメルヴィル・プポー。 オゾン作品の「僕を葬る」でとても惹かれたのですが、すっかり大人の男性になっていました。 アレクサンドルは家庭でもしっかり父親役をして、5人の子ども、理解し合っている妻との関係も良い。 しかし彼の心の傷であるプレナ神父の存在に揺れ動く心境をリヨンの街やパリの街を歩く姿だけで感じられる。 そして自分の過去を正直に家族の前で話すのにはビックリしました。 家庭内で秘密や隠し事はないのです。 アレクサンドルが教会の仲介でプレナ神父と対面するのですが、罪はしっかり認め、「病気だから仕方ない」「私も小児性愛に苦しんでいる」と開き直るシーンは複雑でした。 決して謝罪の言葉はなく、被害者の気持ちはまったく考えていない。 愕然とするアレクサンドルの表情はたまらなかった。 さて、その後は同じ被害者だった2人の男性の話に展開します。 時効になっていない被害者たちもそれぞれ心の傷が深い。 フランソワ(ドゥニ・メノーシェ)も過去に両親が残しておいた書類や手紙を持ち、行動するのです。 そしてエマニュエルも過去のおぞましい記憶から何とか抜け出せるように告訴を決意。 「沈黙を破る会」を発足しマスコミにも訴え活動する被害者たちとその家族。 心身ともに荒れていたエマニュエルの母の応援は心強かったはず。 それぞれの今の立場は違っても、彼らの告訴への決意は揺るがなかった。 おぞましい記憶は決して消えないし、枢機卿始め巨大な教会組織の壁は大きいけれど、オゾン監督の完成度の高い作り方には圧倒されました。 アレクサンドルが長男に「今も神を信じる?」と聞かれて無言になるシーンも印象的なラストです。 ちなみに、フランソワ演じたドゥニ・メノーシェはあの「ジュリアン」の怖~いDV男でした。 あれは本当に怖かった…。