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星ゆたか

星ゆたか

4 years ago

3.5


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North by Northwest

Movies ・ 1959

Avg 3.5

2022.7.5 【座談会レビュー】第十回。 サスペンスの神様と謳われた アルフレッド・ヒッチコック監督 アメリカ公開と同じ1959年(昭和34年)の大ヒット作品です。 出席は同じみ星ゆたか、光みちる、雲ゆき、雨あられ、そして元気になられた風かおるさんです。どうぞよろしく。 (星)まず映画が公開されたこの昭和34年という年は、当時皇太子明仁親王と美智子さんのロイヤルウェディング見たさに人々が、電気店やまだ少なかったテレビの所有家に見に行ったという状況の時代と言われてます。ですからテレビを買って受信契約を結んで‥‥。一気にテレビの需要が高まった年だったんです。 (光)そんななか、ヒッチコックはもうすでに60歳の映像作家の円熟期に入っていて、この観光名所めぐり的な楽しみのあるサスペンスを見せてくれました。ユーモアと、ハラハラドキドキを全体的にはリラックスした雰囲気で楽しませましたね。 (雲)主演は「断崖」(41)「汚名」(46)「泥棒成金」(55)に続くヒッチコック作品のケイリー・グラントさんです。でもどうなんでしょう、人気俳優で興行収入も測れますが、すでに55歳でしたからね。 役柄もマザコン気味の人物、相手役のエヴァ・マリー・セーントさんも37歳で26歳の役というキャスティングも逆にヒッチコック監督だから通ったいう所でしょうか。あの母親役の俳優(ジェシー・ロイス・ランディス)とケーリーでは親子に見えませんも。でもあの派手派手の役作りの母親も何か意味があるんでしょうかね。 (風)エヴァ・マリー・セーントさんって確か、デビュー作の「波止場」(54)エリア・カザン監督の名作でいきなりアカデミー助演女優賞を獲得した俳優で、今回はヒッチコック監督の好きなブロンドの髪に染めて色っぽく演じてました。 (雨)物語の舞台はニューヨークに始まり、特急“二十世紀号”でシカゴに移り、さらにサウス・ダコダの観光名所、ラシュモア山に移ってクライマックスを迎えます。そのエンターティメントを、テンション(緊張)からリラクセーション(弛緩)の方向へ持っていこうとする彼の手法を《コメディ・スリラー》とも言われました。 (星)サスペンスを持続させながら、その末端をショックではなく、スラップスティックなユーモアを設け観客をリラックスさせる手法ですよね。飛行機・列車・自動車などを使い、そのヒッチコック・タッチを出し。小道具としてマッチ・眼鏡・短刀・婦人用安全カミソリ・彫像など。その中で、主人公ロジャー・ソーンヒルの頭文字をとった広告マッチR・O・Tも何か意味があるらしく効果的に使われてました。 (光)しかし広告代理業者の主人公は、始めこそアメリカ秘密諜報部に仕立て上げられた“架空の人物”キャプランに間違えられて、戸惑いますがそのうち仕事そっちのけで、汚名を晴らすべく、危険な状況に自らはまりこんでゆくのも考えたらおかしいんですけど、もうその辺では観客も一緒にドキドキしてるわけですよ。 (風)そしてなんといっても数あるハラハラの名場面の中でも極めつけは、あの“コーン・フィールド・チェイス”(トウモロコシ畑の追っかけ)ですよ。シカゴ駅のイーブ(敵方の愛人と見せかけ実は諜報部のスパイ)のクロース・アップから画面はいきなり一面のトウモロコシ畑の大俯瞰に変わります。ここのシークエンスは実に最初はゆったり、観客もそこの場所に放り投げられたような感触です。大平原の中を突っ走るハイウエイをバスが走ってきて主人公を降ろす。あたりにはまったく人影がなく、晴れ渡った空から日射しが眩しい。時々車が疾走してくるが、彼には見向きもせず通り過ぎて行く。遠く空には薬剤散布をする飛行機が見える。待ち合わせ場所に自分に間違えられた人物がどこから現れるのか、観客にも間をもたせる訳です。反対側から農夫が車に送られてきて、この人物が?と思い、彼も神妙に話かける。しかし違う。バスに乗るために来ただけだ。しかし去り際に、『あんな所に畑はないのに、農薬剤散布をして?』と言葉を残す。バスは通りすぎてゆく。危険が迫っている気配の中、このバスに乗って行けば‥なんて思っている内に。 すると同時に、撮影テンポ・ドラマ展開のギアが一気にチェンジアップして、叩き込むように主人公に飛行機が接近してくるわけですよ。 そして機銃掃射。逃げる、倒れこむ、走る、畑に隠れる。するとつかさず薬剤散布。あの55歳のケーリーの奮闘。そして通りかかったトラックに誤って飛行機が衝突、爆発するまでの一連の盛り上げ。そしてそこに通りかかった野次馬の車を拝借し逃げ去る締めくくりは、まさに、《コメデイスリラー》の好例ですね。 (雲)まあぁ、体調復活の風さん熱く語りましたね。あの場面の展開はヒッチコック監督の狙いで。『男を殺す恐怖を慣習的な暗闇でなく、陽光の下の田園の中におく。つまり普通の道具立ての正反対のロケ撮影でやりたかった。』と。また反対に薄暗い夜景のセットでじっくりというのが、あのラシュモア山の最後のサスペンスでした。 (雨)ニュヨークから三千マイル離れたサウス・ダゴタ州のラピッドシテイのラシュモア山です。彫刻家ガッツオン・ボルグラムが岸壁を利用して彫った四人の歴代大統領の巨大な顔。 初代ワシントン、三代ジェファーソン、十六代リンカーン、二十九代ルースベルトが展望できる有名な景勝地ですね。 (星)ヒッチコック監督作品は、技巧への執着がともすれば、人間的な内容が薄くなるという一部の批判もあったようですが。本作品では主人公と“敵味方”の複雑な関係になる彼女のなかに、恋愛感情が芽生える所とか、敵方の名優ジェイムズ・メイスンがやはり彼女を少なからずとも愛していたあたりの思惑があって、なかなか棄てがたい魅力でした。 (光)恒例のヒッチコック監督の登場シーンですが。バスに乗り遅れた彼。いつもは右から左へ歩くのが多いのに、左からで右側の顔も大きく珍しいとのは通のファンの声。またさらに監督は子供の頃バスが大好きで、終点から終点まで乗ってロンドン市内を見物して回るのが日課だったという話もありますよ。 (雨)スラップスティックな喜劇的な味わいとして。あの場面もありました。無理やり酒を飲まされ車を運転する所です。前方の崖から自動車の片輪が落ちかけ、戻り難を逃れる。危ない所なのに運転している本人はその怖さに気づいてないというあのハラハラ感の面白さ。 (風)そして所どころに登場する職務に忠実な、ウソの芝居をする婦人とか敵方の部下達の、乾いた不気味さは、アメリカ人でない、欧州的、イギリス人の感性って印象がありました。反対にケリー・グラントがシカゴのアートギャラリーで、危険を逃れるために美術品のセリを撹乱する、いい加減な買値を連発するあたりはいかにもアメリカ人的言動の面白さでした。 (星)ヒッチコック監督作品にはまだまだ沢山好きな映画があるんですが、彼の中でも多くの人達を楽しませてくれた一つに今回も語りあえたことは幸せです。どうもありがとうございました。 また宜しく😉👍🎶