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【鳥肌レベルの原作・構成力】 「見たもの全員ダマされる」このキャッチフレーズに、相当勘繰りながら見たものの、そのハードルを見事に越えて来た笑。脚本、演出も含め、この映画を作り上げた力には、もう非の打ち所がない。 ◆ 芥川賞作家中村文則によるベストセラー小説の映画化。監督は『グラスホッパー』の瀧本智行。脚本は『DEATH NOTE デスノート』の大石哲也。出演は岩田剛典、斎藤工、山本美月、北村一輝など。 ◆ 最愛の女性との結婚を控える記者が狙う大物は一年前の猟奇殺人事件の容疑者。容疑者の危険な罠は記者の婚約者にまで及んでしまう。愛する人をこの手に取り戻すため、容疑者の罠にハマっていく記者の運命はー? ◆ 映画に第1章、第2章と章別れになっている構成もめずらしいと思ったけど、なるほどこのシナリオをうまく描くには必要な技法だったと思う。 ◆以下ネタバレあり(未鑑賞の方は必ず離脱してください!)◆ 第1章では耶雲が亜希子を失うまで、第2章では耶雲が真実に辿り着くまで、そして第3章で完全な復讐劇。この構成が幾重にも見事に時間軸を操作して描かれており、全体像が見えるまでも完璧な段階を踏んでいると思う。ラストには耶雲が人間性を失ったポイントも描かれており、一見弱く見えた映画のタイトルが、大変重要なものであることがわかる。構成が芸術的過ぎて、もうとにかく原作ベタ惚れです。 個人的には、途中まで百合子は確実に焼き殺されたと思い込んでました。他に候補もいないので。そうなるとどんなエンドになっても耶雲の非は残るのにどうするんだろうと思っていたら、まさかそれが朱里だとは。結果、勧善懲悪の完璧なシナリオになっているし、耶雲(と言うか岩ちゃん)が相当かっこよく映っている。百合子に金を渡して去って行くシーンも含め、ちょっとそこはやり過ぎではと思うほどのかっこよさでした笑 ただ、狂気という要素で、全てを片付けようとする部分がしっくりこない人はいるかもしれない。朱里が、弟の罪を探っている人間に早々にネタバラシをするのもおかしな話で。狂気的な人間というだけで片付けず、朱里の人間的な背景だけ、もう少し丁寧に描く必要があったと思う。
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