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星ゆたか

星ゆたか

2 years ago

3.5


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Happening

Movies ・ 2021

Avg 3.5

2023.10.24 2022年ノーベル文学賞のアニー・エルノー(40年出生)さんの。 実体験に基づく小説「事件」を。 これまたその内容の〔妊娠中絶〕の体験後読んだ。 ジャーナリスト出身のオドレイ・デイワン(86年出生)さんが監督映画化した作品。 主演はアナマリア・バルトロメイ(99年出生ルーマニア出身)さん。子役から期待されてきた女優との事。 物語は1963年まだ中絶が違法だった頃のフランスの女子大生が。 学位取得の為の試験を意欲を持って迎えようとした矢先に。 予期せぬ妊娠が発覚、狼狽しつつも活路を見出だすべく孤軍奮闘する。 その痛々しいまでの日々を。 主人公の目線に寄り添って(手持ちカメラの撮影)の演出で見せた。 映画上映会に際して、鑑賞中に卒倒した男性をこの監督と主演女優が介護したというエピソード(笑い)もあったとか。 曰く付きの映画でもあります。 そこで少し映画を離れ、より映画を理解する為に。 もっとも大切な性歴史をひもとく。 フランスでは1920~67年までは 〔学校の性教育〕は禁止。 1967年に〔避妊の合法化〕。 1975年に〔中絶の公認化〕。 2001年に〔未成年の保護者同意なしの可能化〕。 2013年には〔同性婚の合法化〕という流れがある。 性教育も現在は8才から学校で受け。 『水着で隠れる大切な体の部分は、やたらに見せたり、触らせたりしない事』に基づく。 『金の話は下品とされるがセックスの話は堂々と』というのが世間評。 EUで最も出生率の高い国とされ、50~60代も9割以上がセックスを楽しんでいるとの事。 そこへいくと日本は1948年の優生保護法から1996年の母体保護法に至るまで、世界でも元々の“恥の精神”構造民族からか。公の場での好き合った男女の愛情表現の節度などや。 あるいは元々性教育からして遅れている国とされている。 中学校の保健学科で性教育に充てられる時間は、三年間でわずか9時間という。 これは文部省指導の【はどめ規定】による教育者の自粛現状にあるらしい。 この【はどめ規定】とは。 『生徒間の個々の心身の発達段階の差が大きいとし。全ての生徒に例えば 《性交》についても指導すべき事項ではない』とする見解らしい。 ただ少ない事例ではあるが、東京世田谷の小学校で2年~6年生から。 性教育を取り入れている所もあり。 そこでは《性交》も図入り絵本で教えていて。あくまでもその行為は双方の同意にもとずいた上での事と、きちんと教えている。 だから決して生徒らも嫌らしいとは思わず。 『自分の命のもとがそうやって出きたんだ』という自然な気持ちで受け入れられているらしい。 その様子を。NHK.BS.TVの番組〈クールJapan〉で見せてもらいました。 つまりこの映画の鑑賞後の、観客のもつべき真の影響は。 ここで描かれたような深刻な性被害の出る基本的な土壌から、見直していかなきゃならないという事ではないだろうか!。 映画では堕胎手術が認められていいない時代故の周囲の人達の反応が、 大変興味深く描かれた。 仲良し3人組のメンバー。大学の寮生の扱い。法に触れる人間とは、 関わりたくない、付き合いたくない とする冷たい態度。 そして両親や友人らへの体面を気にして。妊娠させた当人の全く頼りにならない様子などに本人も観客も失望する。 またヒロインは働いて学費を出してもらい期待されている母親にも(父親はそもそも度外視❔)、妊娠の事実は話せないまま何とか自分一人だけで解決しようとする。 医師すら「堕胎」は刑務所入りになるからと断固拒否し、結果を視て「流産」という診断を下す。 むろん医師は手術には関わり合わないから、“つて”を頼って普通の主婦の“その手の技能者”に、家庭での闇手術として400フラン払って託すしかない。 しかも妊娠12週のギリギリにまで追い詰められてやっと。 ただ個人的な感想としては。 映画の中盤あたりまでは、主人公の妊娠の発覚にあたり。 いつ?どこで?誰と?どんな風に? そうなったから。 という描写が全然ないので、すんなり ヒロインに同情したり、心を寄せて展開を見守る気持ちには成れなかった。 友人も家族も医師も頼りにならない状況で。 理性より欲望がマサってしまったから。 本当は相手を愛した上の結果なら。 当の相手の男と一緒に《どうするか》を考え、活路を見出だしていくべきなのに。 という腹立たしさが正直な所ある。 ただこれまたよくある話だけど、 こんな場合苦しんだり、悲しんだりするのはいつも女性の方ばかりなのも実情だ。 だからこそ、責任を持ってとの意識なんだけど。 この劇中の彼女はその堕胎手術の前の数日前に、不安な気持ちからか たいして好きでもない消防士の男と妊娠中だからといってセックスしている。 この辺もやや同調できなかった。 押し潰されそうな不安な自分の心と体の置き場が(セックス)という事なのだろうか。 けして好んで何回も見たい映画ではないが。 特に若い10~20代の人達には、こんな 性歴史の事情の中であった、性の物語として見ておくべき映画かも知れない。 2021年ベネチア映画祭金獅子賞受賞。