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dreamer

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4 years ago

5.0


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The Whales of August

Movies ・ 1987

Avg 3.6

"人生の黄昏を迎えた5人の男女のささやかな日常を、微妙な心理描写と共にキメ細やかに映し出した詩情溢れる人生ドラマの秀作 「八月の鯨」" ハリウッドの映画史の中で燦然と輝くリリアン・ギッシュとベティ・デイヴィスという二大女優共演という、我々映画ファンにとっては、眩暈がしてしまいそうな凄い顔合わせの映画、それがこの「八月の鯨」です。 海辺の別荘に暮らす老姉妹の話で、リリアン・ギッシュとベティ・デイヴィスの他に、ヴィンセント・プライス、アン・サザーン、ハリー・ケリーJR.といった往年のハリウッドのスターも登場する、平均年齢79歳という凄い映画なのです。 なおかつ、91歳のリリアン・ギッシュが79歳のベティ・デイヴィスの妹役を演じてしまうのにも驚かされます。 特にリリアン・ギッシュは、1896年の生まれで、この映画に出演時91歳で、映画創生期の大監督D・W・グリフィスの作品に連続出演し、この映画の公開時も現役という、奇跡の大女優なのです。まさに、存在そのものが"歩く映画史"とも言えるのです。 この映画自体のストーリーはなんという事もありません。 堅実で、心優しいサラ(リリアン・ギッシュ)と、意固地で我儘な盲目の姉リビー(ベティ・デイヴィス)と、その隣人たちを巡る一日半のドラマ。 忍び寄る"死"とどう向き合うかが、さりげなく、デリケートに、時にユーモアをたたえながら、淡々と描かれていきます----。 やはり、常に"死"というものの観念を心の片隅に宿して生きている人間にとって、この映画の中に散りばめられたセリフの幾つかが、しみじみと胸にしみ、目頭が熱くなるのを禁じ得ないのです。 老女サラは、若くして夫を戦争で失っていて、彼女は深夜ひとりで、何十回目かの結婚記念日を祝うのです。 ブルーのドレスでおめかしして、テーブルに亡夫フィリップの写真を置き、キャンドルと赤白一輪ずつのバラの花を飾ります。そして、想い出の古いレコードをかけ、赤ワインをゆっくりと味わうのです----。 そして、サラはバラの花を見つめながら、つぶやきます。「赤は情熱。白は真実。人生に大切なのはこの二つだわ」と----。 こういうセリフは、他の人が言ったら白々しくなりがちですが、リリアン・ギッシュが言うと凄い説得力があるから不思議です。本当にその通りだと思います。 情熱と真実を求める気持ちを、人生の最後の日まで持ち続けたいと切に思います。 そして、ある夜、サラは隣に住むロシア移民のマラノフ氏を夕食に招待します。 久し振りに口もとに口紅をさし、よそ行きのワンピースを着て、マラノフ氏を迎えるサラ。 彼女は彼に、八月になると水平線に姿を現わす鯨の話をするのです。今年もまた、鯨の来訪を待ちわびているのだと----。 年老いてもなお、明日を信じて前向きに生きようとするサラ。 生ある事の素晴らしさを、死の瞬間まで夢と希望を胸に生きる事の大切さを、あらためて考えさせてくれます。 そして、ラストシーンも実に感動的で、生きる姿勢において対照的な姉妹が、それでも最後には人生と死と前向きに力強く向き合ってゆこうという気持ち(海に出現する鯨はその象徴なのです)を確かめ合うのです。 そして、肩を抱き合った老姉妹の姿は、まるで初々しい少女のような気さえしてきます。