Comment
主役あるいはそれに近い役どころとしてケイシー・アフレックを観るのは3作目だけど、どれもいつも陰があり、だからこそ誠実さが光り、みたいな感じ。あの独特なアンニュイな話し方にやられる。 いったいリーには過去に何があったのか…?回想シーンが随時挟み込まれ、また周囲の人々の何気ない会話などから徐々に明らかになっていく。登場人物の心のひだを丁寧になぞっていくような、必要なことは映像から読み取れと言わんばかりの秀逸な脚本。 今まで封をするようにしていたのに冷凍チキンを見て急に噴き出すパトリックの悲しみ、あれを言わなきゃ言わなきゃとずっと自分を責め続けていたランディの絞り出すような悲しみ、そんなシーンすべてが素晴らしい。 音楽の使い方もいい。途中、アルビノーニのアダージョ出てきて、あぁこのあと何かとんでもなく悲しいことが起こるのだな、と心の準備ができた。まさしくその通り。 期待されるようなハッピーエンドはない。リーの心の氷はまだ溶けないし、この先も溶けることがあるのかわからない。乗り越えられないことだってあるのだ。それでもやはり、愛する兄の遺したパトリックがいれば人生を続けていけるのでは、と思わせるしみじみとしたラストだった。
14 likes0 replies