
dreamer
4 years ago

The Hustler
Avg 3.4
ポール・ニューマン主演の「ハスラー」は、誘惑と挫折と破滅を静かに漂わせた、映画史に残る作品だ。 それにしても、ミネソタ・ファッツ(ジャッキー・グリースン)は、こんなに悲し気な顔をしていたのか。 「ハスラー」をあらためて観直した後、私は意外な感に打たれた。 この映画は傑作だ。演出が良く、俳優が良く、編集が良い。 誘惑と挫折と破滅を静かにたたえた、黒白の画面が、錆びたナイフのような現実を、観る者に鋭く突きつける。 言い換えれば、主人公のエディ(ポール・ニューマン)は、夢が無惨に滅びるなかで、初めてヒーローとして直立する。 こういうアメリカ映画は、極めて少ないと思う。 話自体は、とてもシンプルだ。ビリヤードの才能に恵まれたエディが、大金のかかった試合で、百戦錬磨のファッツを追い詰めながら、痛恨の敗北を喫する。 再起を誓う彼だが、その前には自己破滅的な女(パイパー・ローリー)やメフィストフェレスのようなギャンブラー(ジョージ・C・スコット)が、次々と姿を現わす。 監督のロバート・ロッセンは、そんな話をほとんどもたつかせない。 ぶっきらぼうな語り口を崩さず、暗がりで蠢く男たちの姿を、彫り深く捉える。 その一方で彼は、悪に対する考察を持続し、敗北や自虐の愉悦を、容赦なく暴き出す。 その視力に応えて、俳優たちも好演する。わけても強烈なのは、悪魔の化身に扮する、反骨の名優ジョージ・C・スコットの存在だ。 指をひと振りするだけで、世界をひび割れさせるような悪魔を造型しつつ、この名優は、エディの暗部を鮮明に際立たせていると思う。