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非常に惜しい。映画としてはかなり好きな部類。ただ一点どうしても個人的に残念な点があるためにこの評価とせざるを得ない。 それは、ずばり主人公の宮崎あおいが恋をする相手、小出恵介にある。念の為言うが、彼は全く悪くない。キャスティングした人間が悪い。この役には、カリスマ性・見た目の格好良さ・頭の良さ・ミステリアスでクールな雰囲気・大人っぽさ・掴みどころのない飄々とした言動などが求められる。非常にハードルが高い。この役がこの話の説得力を決めると言っても過言ではない。ところが、残念なことに小出恵介ではどれもが中途半端なのだ。本人がいくら頑張っても、申し訳ないが小物臭が強すぎる。主人公が強い憧れを持つ相手でなければならないのに、宮崎あおいと並んだときに圧倒的に存在感で劣ってしまう。目の動きなどの表情や言葉の言い回しなどもいちいち軽く、先述したような雰囲気とは程遠い。これでは主人公の動機にまるで説得力が出ないし、話全体がチープな茶番劇のように見えてしまう。実は主人公に恋をしていた、というラストで明かされるギャップも、普通にそう見えてしまっているので全く意外性として機能していない。ここは例えばオダギリジョーのような圧倒的な佇まいを出せる人間にするべきであった。主人公が宮崎あおいなら尚の事。本当に勿体無い。 その他の役者もなんだか微妙だった。実兄でもある宮崎将は、確かに顔は良いがやっぱり存在感がかなり薄くて軽い。仲間たちのリーダーを務めるだけのカリスマ性はまるで感じられない。小嶺麗奈は棒読みがキツイし、存在意義も良くわからない。 三億円事件をモチーフにして当時の若者の空気感を描いてみせるテーマ性は好み。あの事件の裏にあったのは一人の孤独な少女の恋心だった、という飛躍した設定も切なさがあって良い感じ。この設定を軸にしたファンタジーだと捉えれば、多少の現実離れしたご都合主義も許せてしまう。ただ、あれだけ声を出していて女だと気付かれないというのは、さすがに無理があり過ぎて看過しづらい。無理矢理でも良いから何か言い訳を用意してほしかったところ。あと冒頭に陽の光の中で白ヘルを脱ぎ去る少女がうつる割に、本編でそんなタイミングが一度もないのもなんだか不誠実。色々と勿体無い作品だった。
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