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サム・ペキンパー監督の「キラー・エリート」は、彼の作品群の中でも失敗作の一篇だろう。 ロバート・ロスタンドの原作をスターリング・シリファントとマーク・ノーマンという手練れの脚本家がシナリオを書いているが、案外と定石的で、雇われ仕事の感が否めない。 コムテグという暗殺組織の腕利きジェームズ・カーンが、相棒のロバート・デュヴァルと二人で監禁されていた亡命政治家を救い出すが、デュヴァルはその人物を殺し、カーンの肩と膝にも弾丸を放って逃げるのが序幕。 カーンが手術を受けて、回復するまでのリハビリの経過の描写が必要以上に長たらしく、新しい仲間を作った彼が、幹部のアーサー・ヒルの命令で台湾の政治家を護衛することになる。 そこで、デュヴァルが加わっている敵の一味と繰り広げるアクション場面は、ペキンパー監督お得意の暴力描写にはなっていて、相手を中国人たちにして、目先の変化を狙っているものの、どうもキビキビした迫力にならないのは、編集が上手くないのも一因だろう。 そして、最後の決戦の舞台になる廃船の置き場は、船がずらりと並んでいる風景が珍しいが、日本(?)の忍者部隊が現われ、大時代的なアクションを展開するに至っては、もはや何をか言わんやの世界になってくる。 コメディ・アクション映画ならともかく、深刻なリアリズム調できているのに、こういう場面がくると、全てがぶち壊しになってしまう。 最後に幹部のアーサー・ヒルが、全ての糸をひいていたことがわかるという設定も定石的すぎるが、すぎるのが目立つのは、そこまでの作り方が上手くないからだ。
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