
星ゆたか

Postmen in the Mountains
Avg 3.6
2024.10.20 2001年、9月11日にあのアメリカ同時多発テロがあった年。 [リトルダンサー]と共に単館公開映画で好成績の作品です。 キネマ旬報のベスト4位。 これまた20数年ぶりに鑑賞。 80年代初頭.中国湖南省西部の山間地帯。 長年責任と誇りを胸に歩いて郵便配達をしてきた。 重い郵便物を背負い続けて、その仕事を続けてきた男。 50代半ばであるが、膝を悪くして地元の郵便所長から。 辞任要請を受け、代わりに息子がその役目を引き継ぐ事に。 その最初の仕事(二泊三日·約120km)に付き添う父と飼い犬と息子の話である。 息子は寡黙で留守がちだった父に対して、いつしか心の隔たり(嫌われている?)を抱いていた。 しかし一緒に山あいの村を訪ねてみて。 人々の信頼を集める姿に接し。 公務員といえど、その困難な重労働に対し報われない(普通とっくに幹部クラス扱いになる)父の人生に。 尊敬の想いを深めていく。 途中早廻りだからと冷たい川水の中を渡って行く所。 息子が先に渡り、戻って父をおぶって渡るにあたり。 背中の父親が幼かった息子が、こんなにも頼もしく成長したかと感じ。 目頭をあつくする場面は。 息子が父親を追い抜いていく。嬉しくもあり、男としては、寂しくもある、熱い情景だ。 この映画の中では、息子が父親を大きく感じたり、小さく感じたりする所が幾つかあり。 それが、社会に人が出ていくという事で。 例えば日本の戦前の小津安二郎監督の。 [生まれてはみたけれど](1932年)という無声映画で。 家庭では立派な父親が、会社では、上役にヘイコラしておべっかい使っている姿を知って、失望するのと似ていて。 人間が社会に出て生きていくという事は、理想の人生観の綺麗ごとばかり言ってられない現実があるという事だ。 結局息子はとりあえず、父親の積み上げてきた配達先の人達の信頼を裏切らない仕事ぶりに従事し。 あの山間の村の少年が、学校は遠くて通えないから。 通信講座で学びながら資格を取り。 何とかただの祖父を世話する山あいの牛飼いで人生を過ごすのでないらしいと希望をもたせる所から。 この郵便配達の息子も、きっとゆくゆくは、労働環境の現状を改革して。 その郵便配達の仕事も、父親とは違って1歩でも2歩でも。 双方(管理側と労働者)にメリットのある効率的な方法を見出だしていくのではないかという期待を抱かせた。 ただ監督はこうも言っている。 『経済が発達すると、一方で人間関係が希薄になりがちだから。 その辺は真心や誠実さは大切にしたい』と語っていて。 あの目の見えない老婆の所の配達。 山あいの家に1人住み。 育てた孫が都会から出してくれる手紙を唯一生き甲斐にしている女性。 その老婆を失望させない為に。 嘘の手紙を読んで聴かせる感動の場面がそれを象徴している。 (でも、演じた女優さんはまだ60代の活発で元気な方らしい。) また父親が母親と出会った経緯と似ている。 息子と綺麗な娘との間柄を薦める父に対し。 あの娘と一緒になる事は、母さんが父さんの留守にいつも故郷を思っていた二の舞はふませたくないと。 その恋愛に戸惑いを息子は見せる。 これなども、これまでの父親と母親の人生を振り返ってみて。 両親の人生の過ごし方と。 これからの息子らの人生(恋愛·結婚)は、単純に同じ.繰り返しではないとする趣のある考え方だ。 大変なロケーション製作だったらしいが。 父親を演じたトン·ルウジュン( 1946~2023)は本作で中国の映画主演男優賞。 息子役のリイウ·イエ(1978年~)当時学生で、この作品で認められ役者人生に。 その中国山間部光景に。 かぶる音楽の素朴で穏やかな旋律と。 若い世代の携帯ラジオから流れる英語の歌が。 過去と現代を繋ぐ役目になっていて、居心地がいい✨。