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実に良かった。 まずは冒頭の「ハング・ミー・・・」が、非常に浸みる。フォークソングとは言っても、どちらかというと叙事詩の分野だなと思わせる。そしてこれがラストへと繋がり、猫の名前から「オデッセイア」のパロディだと気づかされる。 エンドロールへと流れる場面では、ディランの弾き語りが遠巻きに描かれ、その後やがて「神」の如くの大スターとなる人間が次の潮流を作っている。主人公はその潮に「名も無く」流されてしまうのだろう。 60年代初頭の、宿無しのうらぶれたフォークシンガーが主人公だが、その宿流れの生活がユーモラスに描かれ、中間部はロード・ムービーとなり、そして結局は冒頭へと帰結する。そしてディラン。 猫の使い方が実にいい。時に相棒であり、時には主人公自身であったりする。カメラが、それぞれの場面で、この猫の表情を抜群のセンスで撮っている。 ジョン・グッドマン、キャリー・マリガン、F・マーレイ・エイブラハムの台詞がまた良い。それぞれ好きなことを言ってはいるが、それでいてどこか「悲しい」のだ。 サウンド指向の現代では、むしろ新鮮に響くであろう「詩」指向のポップ・カルチャーが懐かしい。そういう映画だと思う。
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