
Schindler's Memo
2 years ago
4.0

The Fly
Movies ・ 1986
Avg 3.2
この映画は、58年の「蝿男の恐怖」のリメイクなのだが、公開当初クローネンバーグ自身の監修による解説という触れ込みで、次のような説明がされていた。 Aのポッドの物質を分子レベルで解析、量子化し、Bのポッドで再構築する転送装置を発明し、自分自身で実験したところ、Aのポッドにハエが間違って入り込んだことから、Bのポッドに現れたのはハエと人間のDNAが融合された生物となってしまった。 これに当時の映画オタク、科学オタクが噛みつき、それだとBのポッドにはあらかじめ人間とハエを構成する物質がリッチに存在しなければならず、そもそもコピーであってAのポッドからオリジナルが消失する必要がない。 これにさらに強靭な映画オタクが反論し、いやいや時間軸も量子化するのであって、一種のワームホールを作って移動するのだという時空転送論を展開したが、それだとハエと人間が融合する事は無い。 この不毛な論争には未だ決着がついていないが、そんなことよりこの映画は、クローネンバーグ流のピュアな恋愛映画だと私は思っている。 何しろ、恋人がだんだんとハエになっていくにもかかわらず、愛し続けるのだ。 ジーナ・デイヴィス自身も恋多き女であったが、このヒロインの愛の深さは、古今のベタな恋愛映画のヒロインを完全に凌駕している。そこを観る映画ではないだろうか。