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【別バージョンがある映画】 ◇完全版◇ デヴィッド・フィンチャーの記念すべき監督デビュー作。ではあるが、残念ながらその評価についてはあまり芳しくない『エイリアン3』。 私自身は、映画そのものはけっして悪くはないと思いながらも、やはり【ニュートとヒックス】の処遇に対する不満のほうがはるかに大きく、トータルの評価は低かった。 【完全版】を観るまでは。 【完全版】は劇場公開版の115分よりも実に30分長い145分。特徴的なのは、ただ単に未公開場面を追加しているのではなく、一部分は場面そのものを差し替えている。 ざっと、それらの場面を挙げてみる。 ・冒頭、囚人惑星フューリーに不時着したリプリーが救出されるシークエンスが大幅に変わっている。劇場公開版ではリプリーはカプセルの中で見つかるが、完全版では一人だけ浜辺に打ち上げられている。 ・エイリアンが収容所に侵入する時の宿主が「犬」から「牛」に変わっている。さらにこれに付随する全ての場面が差し替えられている。 ・3人でいるところをエイリアンに襲われ、生き残った1人、劇場公開版ではいきなり医務室へ運び込まれるが完全版では“1人逃げ延びたあと、食堂で飯を食っているところを他の囚人たちに見つかる”という場面が追加。のちにとんでもない行動を見せる彼の異常性の一端を垣間見せている。 ・ラストシーン、リプリーの最期の場面がちょっと変わっている。 そのほか、あちこちの場面で、特に登場人物たちの「会話」場面が長くなっている。 その結果、あきらかに映画として良いものになってる! 冒頭の一連の場面なんて、すごく力強さがあったし、全体として間違いなく観応えが増えている。少なくともこの時点でデヴィド・フィンチャーがやはりタダ者ではなかったことが分かる。 だから今、私の中で『エイリアン3』といえば、この『完全版』でしかなくなってしまっている。 『劇場公開版』の☆は2.5だが『完全版』の☆は4.5だ。
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