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この年、韓国映画の「クロッシング」というのがあった。それは父と息子の道行きが、遂にはクロスしないという大悲劇であったのだが、本作はラスト前で、その「クロッシング」が起こる。 しかし、それに特段の意味があるというわけではない。例えば、2005年のアカデミー映画「クラッシュ」や2000年の「トラフィック」のような、緻密に計算された収束を期待すると裏切られる。 本作は、あくまで3人の警察官(各々凄い演技!)のエピソードを、それぞれ特有の緊張感で追ったオムニバスの形式を採っている。 しかし、観終わって残るのは、やはり「なるほど」という納得感。3人はそのクロスする場所に、それまでそれぞれに非常な「喪失」を味わい、更にとてつもない「喪失」をするためにそこに集まる。 いや、リチャード・ギアは違うだろうという人がいるかもしれない。私は、彼もまた、「大過無く警察官という公務を果たして年金生活に入る」という、今までガマンにガマンを重ねて貫き通してきた「主義」を失ったのだと思う。 それが証拠に、ラストのストップ・モーションでの彼の表情は、晴れ晴れとはしない。非常に「空しさ」を感じさせるショットだと思う。
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