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パーフェクトな日本映画だと思う。欠点があるとすれば、パーフェクトすぎる、つまり丁寧すぎるというところか。 冒頭の葬式から自叙伝のエピソードでタキの出自を全て語らせ、妻夫木に自叙伝を読ませる中で、松たか子扮する「奥様」とその家族をすべて説明し、わずかな間に昭和初期の「小さいおうち」の世界へ滑り込む。 ダブル主演的な位置づけの松たか子と黒木華は、双方日本女性として両極な意味で美しく、付けられた音楽も美しすぎるほど美しい。 また、適度なユーモアが散りばめられるのと、倍賞千恵子の「泣き」にみられる悲しさ(凄まじさか?)が同居しているのは、もはや監督の凄腕としか言いようがないと思う。 ただ、この完成度の高さが鼻につく人はいるかも知れない。特に、ラストの海辺での車椅子のシーンなどは、監督の凄腕によりしっくりと受け入れることができるが、本当に良く考えてみると全くリアリティが無い。このようなところは、この監督の過去作に共通する点(一番顕著なのは「幸せの黄色いハンカチ」のラストシーンであろう)で、これを素直に受け止める余裕が必要なのかもしれない。 そんなことより私は、この映画は、山田洋次にしては珍しく、割と際どい女性観が出ていると思った。例えば、松たか子が一人で着付けをして帯を結うシーンでの「情念」のようなもの、女中部屋で浴衣で一人でくつろぐ黒木華の妙な色気、また淡い三角関係と一方通行の同性愛的?感情により促されるタキの行動など・・・。これらの点が、非常に興味深かった。
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