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ウェス・アンダーソンが監督・共同脚本を務めた、2001年公開のコメディ・ドラマ。 ウェス・アンダーソンの長編3作目となる本作は、出演者のオーウェン・ウィルソンが共同で脚本と製作も務めているとのこと。ウェス・アンダーソンは前作『天才マックスの世界』で若手監督として一躍脚光を浴びたとは言え、とは言えですよ。本作に関してまず驚かされたのは出演キャストの豪華さ!当時まだ32歳の新鋭監督のもとにジーン・ハックマン、ビル・マーレイ、ダニー・グローヴァー、アンジェリカ・ヒューストン、アレック・ボールドウィンといったハリウッドのベテラン役者が集っている事からして、当時のウェス・アンダーソンの”超大型新人っぷり”がよく分かります。他にも当時一線で活躍していた役者も勢揃いしており、まずはこの豪華キャスト陣が画面を右往左往するリッチな絵面だけでもお得感があります。しかし同時に感心させられたのは、これ程までに豪華な布陣を揃えていても「ウェス・アンダーソン作品」という印象やインパクトが常にそれを上回っているという事です。例えば「エクスペンダブルズ」シリーズにおいて「役者が豪華」という要素を上回る卓越した演出や脚本とか思い出せます?もちろんあちらはその豪華さこそが一番の売りなので間違いではないのですが、本作を観ればウェス・アンダーソンがいかに「作品世界の創造」に重きを置いているのかは一目瞭然です。 またウェス・アンダーソン作品で個人的に好きなのは、全編が一貫したトーンで語られていく中で突然ギョッとするようなシーンをメリハリも付けずヌルッと挟み込んでくるところです。今回で言えば『グランド・ブタペスト・ホテル』にも通ずる”指のくだり”です。ただこういうシーンも不思議と「悪趣味」という風には伝わって来ないんですよね。こうして様々なユーモアを全体の気品やムードに即した形で描く辺りも私は毎回楽しみにしている部分です。(というか性格的にもシーンが統一されていないのが嫌なんでしょうね)。しかし前作に続いて明快な起承転結というものは見られない為、この淡々とした作りが退屈に感じられる方も少なくないとは思います。このタイミングで2作目『天才マックスの世界』から最新作『フレンチ・ディスパッチ』までを順に鑑賞してみたのですが、正直私も作品のインパクトという意味では本作が一番薄いように感じます。ただ「妙にクセになる」という感想を抱いてしまっていること自体がこの世界観にドップリ浸っていることの証明でもありますし、前作に引き続き派手なクライマックスが用意されている事からもやはり十分な満足度を与えてくれる作品ではありました。登場人物のファッションにも注目! 何故か昔からジーン・ハックマンとビル・マーレイが混同してしまう。そんな2人が遂に同一画面に収まってしまってもうパニック。
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