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2019年164本目は韓国と北朝鮮による前代未聞の謀略、北風事件を題材にしたスパイ活劇『工作 黒金星と呼ばれた男』です。 恐れを知らずに言わせていただくとすれば、今年ベストワンの1本でした。本作、イーサン・ハントやジェームズ・ボンドのような凄腕スパイが登場するわけでもないのに、全体から滲み出る緊迫感が尋常ではありません。目まぐるしく動く関係者の思惑によって事態はますます混迷を極め、一瞬たりとも目を離すことができないのです。 現在同時に公開されている『出国』では、国家情報院の前身である安全企画部と北朝鮮の関係を分かりやすい「勧善懲悪」として捉えていたのですが、本作で明かされる北風事件の真相からするとそれは嘘もいいところで、あまりのドス黒さに言葉を失ってしまいます。 こうしたスキャンダルを大々的に暴露しながらも『工作』は娯楽映画としての見どころをまるで疎かにしないばかりか、本来ならば絶対に交わるはずのなかった二人の信頼関係を描くことによって、「未来」を感じさせる内容にまで昇華しているのが本当に素晴らしくて。ラストシーンではもう号泣でしたね。日韓対立に揺れる昨今にこれほど相応しい、鑑賞すべき映画って他にないと思います。
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