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のんびりした時代劇だった。 殺陣もあるし、切られて死ぬ人もいるのに、こんなに温かな話しになってるなんて不思議。 黒澤明が脚本、山本周五郎が原作。山本周五郎と小泉 堯史の雰囲気だと思った。これを黒澤明が撮ったなら、それはそれで面白い作品になったことだろうが、小泉監督だからこそこのゆったりした作品になったのではないか。この緩やかな作風が監督ならではだと思う。黒澤明に捧げると言っているが、そんなに卑下せずに、堂々と自分の作品だと胸を張ってほしい。 この作品の肝は寺尾聰と三船史郎だ。剣の腕は人一倍立つが、腰が低いこの侍は寺尾聰以外に思い当たらない。確かに弱そう。刀を持っていても弱そう。でも、緩急の動きの使い分けが上手い。ゆっくり静かな型の動きは目を離せない。避けるときや刀を振る一瞬のキレは驚くほどだった。剣豪と昼行灯の両方を兼ね揃えた役はさすがだ。 三船史郎はほとんど観たことない役者だった。あの三船敏郎のお子さんなのね。さすがといっていいのかわからないが、癇癪持ちだが人情に篤いお殿様を見事に演じていた。この役に三船史郎があてがわれていなかったら、この作品は成立しない。寺尾聰以上に責任のある役だったと思う。口は悪いが誰からも愛されるこの役は中々難しいのではないだろうか。このお殿様をこちら側が好きになれなければ、このゆったりしてるが、キレのある雰囲気は出ていない。この役者のお芝居をもっと観たいと思った。 最後のシーンで、お殿様が馬で浪人をものすごい速さで追いかけているが、それと対称的に二人がのんびり歩いてるのが好きだった。まぁ、キレイだこととか言いながら、爽やかな空の下、旅を楽しんでいるのが微笑ましい。お殿様が二人に追い付くまで見せないのもなんとも好感だった。やっぱり、最後は絶対その方がいいよね。粋ですなぁ。
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