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ジョン・フォード監督によって製作された1941年のアメリカ映画 ・ 第14回アカデミー賞で作品賞、監督賞、助演男優賞など6部門を受賞した ・ ウェールズの炭鉱業で生計を立てるモーガン家。ある日、経営者が賃金カットを断行したため、長男イヴォーらは組合結成に動く。しかし、父ギリムがこれに反対したことから、息子たちは末っ子ヒューと姉のアンハラドを残して両親のもとを去ってしまう。一方、牧師グラフィードは、川に落ちた母を助け凍傷になったヒューを励ましたことを機にモーガン家と親しくなり、アンハラドと秘かに惹かれ合うのだが…。 ・ 階級社会であるイギリスの労働者階級の象徴として描かれるのは、決まって炭坑夫だ。そんな炭坑ものの元祖と言ってもいい作品なんだけど、これがアメリカの作品なんだよね。西部劇を得意としたジョン・フォード監督は、アイルランド系である自身のアイデンティティであるアイリッシュを愛していたから、お隣のイギリスを描くのも得意だったのかな。 ・ 父親が肉を切り分ける大黒柱であり、妻は夫を支え、子供たちは父親に従いながら家族で支え合うという、典型的な古きよき家族を描いている。時代の波により、失業者が増え、アメリカなどへ移民として渡るという歴史も描かれていて、イギリス階級社会の歪みを感じることもできる。しかし、監督が一番に主張しているのは、誠実に生きることの美しさであり、それを見事に映像化している。 ・ 威厳があり信念を貫く父親を演じ、アカデミー賞助演男優賞を受賞したドナルド・クリスプや、禁欲的で恋に苦悩する牧師を演じたウォルター・ビジョンといった名優の演技が映画を支えている。主役の1人である末っ子ヒューを演じたロディ・マクドウォールも目立っていた。この俳優は「猿の惑星」のコーネリアスやシーザーを演じた俳優だし、「フライトナイト」のピーター・ビンセントを演じた俳優だから、SFやホラー映画好きには敬愛される存在だ。 ・ イギリスの精神をアメリカが描いているのが気になるかもしれないが、多くのイギリスの移民がアメリカ人になったわけだし、アメリカ人のルーツの1つであるわけだから、あながち間違っていないと思う。誠実に生きるというのは難しい。この映画は、そんな難しい生き方を教えてくれる作品だ。
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