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観終わった後に何とも辛く嫌な気持ちになる名作。気が触れてしまう主人公を描いた作品は数あれど、本作は群を抜いてその病み方が胸に来る。 金持ちの農園の娘として裕福におおらかに育った彼女は、若い頃に結婚した詩人志望の男を自殺に追いやってしまう。さらに農園を手放す羽目になり、心の支えを求めて次から次に男に手を出すうちに精神を病んでいく。最終的に頼った妹の家では、粗野な男がギラギラと彼女に敵意を向けてくるのだった。彼女は自分のなけなしのプライドを必死に守るため、嘘と虚栄を身に纏い、周りを見下すことで精神のバランスを保っている。男はそんな彼女の存在が鬱陶しくてしょうがない。彼女を揺さぶり、必死に見て見ぬふりをしている現実を乱暴に突きつけることで、ついには彼女の精神を破壊してしまうのだった。 とにかく彼女の病み方が絶妙で、見ていて本当にしんどい。主演のヴィヴィアン・リーが素晴らしい。ある程度年をとってしまったにも関わらず、自分の持っているものは女としての魅力しかないと信じ込み、男と見るや誘惑し始める。強迫的に化粧をし、安いが派手なドレスやアクセサリーを身に纏う。自分が年齢を重ねて魅力を失っていっていることが不安でしょうがないため、男と会うのは暗い場所のみ。何とも哀れで辛い。 粗野で血の気が多くギャンブル好きのイケメンをマーロン・ブランドが好演。いつの時代も女はこういう男に嵌ってしまうものなのだと実感した。 欲望という名の電車は本当に走っていたらしいと知って驚いた。この名の電車に乗って最終的に辿り着いてしまったのがあの妹の家だったのだと思うと、何とも象徴的で哀れで切ない。
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