Comment
【持っていかれる映画】 冒頭で持っていかれる映画のメガトンパンチ。その勢いのまま、3時間を飽きなく見れる。主演2人の演技力に目を見張り、マッチしまくった楽曲に震え、映画愛にも溢れた極上の映画時間が楽しめる。 ◆トリビア ○ ブラッド・ピット扮するジャックは、実在のスター、ジョン・ギルバートを、マーゴット・ロビー扮するネリーはサイレント時代の人気女優クララ・ボウをモデルにしている。いずれもトーキー(映像と音声が同期した映画)時代に急激に人気を失った俳優として知られている。(https://babylon-movie.jp/column/index.html) ブラピとジョン・ギルバートは、複数回の離婚を経験している事、アルコールがその離婚の原因である事で共通している。(https://eiga-pop.com/critic/267) ○ ブラッド・ピットはジョン・ギルバート、ダグラス・フェアバンクス、ルドルフ・ヴァレンチノなど、サイレント時代の俳優作品を事前に多数鑑賞。台詞がなく、たまに字幕が出るだけの、今とは違う演技のスタイルを学び役作りをした。(https://screenonline.jp/_ct/17597888) 〇ジャックが人生を振り返り、センチメンタルになる表情にカメラが近づくシーンが、監督が本作での一番のお気に入り。ブラピのあまりに脆く、優しく、繊細な演技に、その場でカメラの存在を消したくなったという。(https://moviewalker.jp/news/article/1123230/p3) ○ネリーのモデルとなったクララ・ボウは両親による自身の虐待経験から、泣きの演技に長けた女優だった。ネリーを演じたマーゴット・ロビーもそれを本作で見事に体現している。(https://eiga-pop.com/critic/267) トーキー映画の撮影に臨んだネリーの第一声が大きすぎて、音量計測機材の針が振り切れてしまうくだりがあるが、これはボウの有名なエピソード。(https://www.gqjapan.jp/culture/gallery/20230208-babylon-movie/amp) ○ ブラッド・ピット演じる大スターのジャックに突然キスするシーンは、マーゴット・ロビー自ら出したアイデア。(https://www.cinematoday.jp/news/N0134881) 〇ハリウッドのサインは、きらびやかなモニュメントであるのと同時に、飛び降り自殺の名所としても知られていて、そんな夢と悪夢の共存、光と闇の二重性が本作でチャゼル監督が描きたかった、ハリウッドの核心。(https://moviewalker.jp/news/article/1123230/p2) 〇ケネス・アンガー『ハリウッド・バビロン』は、サイレント時代のハリウッドを道徳の乱れた罪深き都、と聖書に書かれた古代バビロンに例えた著書。本作もそんなハリウッドを描く。(https://babylon-movie.jp/column/index.html) ○ハリウッドは、1910年代、水も引かれず人が住まない土地だった。映画の特許を持つエジソンがニューヨーク等に本拠地を置いており、そこから一番遠いハリウッドに映画会社がたくさん作られた事から今のハリウッドがある、と言われている。(https://eiga-pop.com/critic/267) 〇第95回アカデミー賞衣裳デザイン賞にノミネートされている本作は、総数7000着、エキストラとセリフのある役150人分、メインキャラには約15着ずつ衣装を製作。そのうち主演二人が着用した衣装などが2/14まで日本橋三越本店で展示中。(https://www.oricon.co.jp/news/2266830/full/) ○本作公開の翌週に、世界一のジャズプレーヤーを目指す青年・宮本大を中心に描く「BLUE GIANT」が公開。ジャズミュージックが鳴り響く映画が2週連続で公開されることに併せコラボ映像が制作された。(https://amp.natalie.mu/comic/news/512148) ◆概要 2022年度アカデミー賞作曲賞・美術賞・衣装デザイン賞ノミネート、第80回ゴールデングローブ賞作曲賞受賞作品。 【脚本・監督】 「ラ・ラ・ランド」デイミアン・チャゼル 【製作総指揮】 トビー・マグワイア 【出演】 「ブレット・トレイン」ブラッド・ピット 「アムステルダム」マーゴット・ロビー 「スパイダーマン」シリーズ トビー・マグワイア 「レディ・オア・ノット」サマラ・ウィービング 「リチャード・ジュエル」オリヴィア・ワイルド フリー(「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」ベーシスト) 「スティーブ・ジョブズ」ルーカス・ハース 「ファンタスティック・ビースト」シリーズ キャサリン・ウォーターストン 【音楽】 「ラ・ラ・ランド」ジャスティン・ハーウィッツ 【公開】2022年2月10日 【上映時間】189分 ◆ストーリー 夢を抱いてハリウッドへやって来た青年マニーと、彼と意気投合した新進女優ネリー。サイレント映画で業界を牽引してきた大物ジャックとの出会いにより、彼らの運命は大きく動き出す。恐れ知らずで美しいネリーは多くの人々を魅了し、スターの階段を駆け上がっていく。やがて、トーキー映画の革命の波が業界に押し寄せ……。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆表と裏 冒頭のドラッグとセックスにまみれた乱痴気パーティーで、この映画の世界観にどっと引き込まれる。象まで登場する混乱ぶりと、幾人のゲストがぶっ倒れた夜明けを車をぶち壊しながら去っていくネリーに笑えた。15年かけて構想を練ったというチャゼル監督が、当時を調べていく中で分かった事実を描いたというのだから、あんなパーティーが本当に行われていた当時のエンタメ界の表と裏の激しさを垣間見る。また、同じ場所でいくつもの映画撮影が同時進行し、人が死んでもお構いなしで撮影を続けていく無声映画の現場のエネルギー。あれもあながち嘘ではないと思うと凄まじい。 ◆光と闇 パーティーで、その顔をタトゥー入れされるほど超人気のジャック。トーキー映画の登場で自分の声入りの演技を嘲笑され、自分を卑下する記事を読み、次第にその表情に物悲しさを帯びていく。「助けてやってほしい」とあのパーティーと同じセリフを発した時、全てを理解し、覚悟を決めた彼が向かう闇。あの悲哀に満ちたブラピの表情が素晴らしかった。また一方で、涙の演技で一躍スターの座を勝ち取ったネリーは、やはりトーキーに順応できず、マニーのお膳立てのパーティーもぶち壊し。ギャングとの金銭トラブルに闇落ちした彼女もまた、マニーの車を降りて闇の中へ。遺体で発見された極小の記事が栄枯盛衰の悲哀そのものだった。 ◆映画愛 冒頭のあのカオスな無声映画の撮影現場、ネリーがストレスの頂点に至る初のトーキー撮影と、現場を描くシーンは映画ファンにとってやはり面白い。マニーのお膳立てパーティーでネリーが男性にぶちまけた嘔吐は「スタンド・バイ・ミー」のオマージュか。映画スターの栄枯盛衰を描く本作は当然ながら至る所に映画愛が満ち溢れていた。そしてラスト。本作と同じくトーキー映画の台頭を描いた「雨に唄えば」を見ながら涙するマニーから、映像はフラッシュバック。映画の元となったと言われる「動く馬」、初の映画である「列車の到着」から、「ターミネーター」や「アバター」といった映画を革新した作品の映像が続く。ネリーとジャックのフィルムは、まるで水の中に溶け出す液のようによどみだし、原色の画で映画は終わる。エリノアがジャックに“役者は映画という形で残り続ける”事を説いたように、ジャックとネリーの魂は映画の礎となり、映画として生き続ける、ラストシーンはそんな映画の明るい未来を照らす前向きな訴えのように自分には思えた。 ◆関連作品 ○「ラ・ラ・ランド」('16) チャゼル監督の代表作。本作の音楽も同じ人物が担当している。アカデミー賞6部門受賞、史上最年少で監督賞を受賞した作品。プライムビデオ配信中。 ○「セッション」('14) チャゼル監督が長編2作目にして、アカデミー賞3部門を受賞し、期待の新星とうたわれた出世作。プライムビデオ配信中。 ◆評価(2023年2月10日現在) Filmarks:★×4.0 Yahoo!映画:★×2.5 映画.com:★×3.7 引用元 https://eiga.com/amp/movie/97881/ https://ja.m.wikipedia.org/wiki/バビロン_(映画)
23 likes0 replies