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監督がMVを主戦場にしてるだけあって、構図、ライティング等々芸術点はかなり高い。洋楽を映画音楽として多用しているのも、好みは別れるだろうが映像との相性は良く、飽きさせない。自身の経歴をフル活用して、監督としてのキャラクタリスティックは確立できている。 ただ、ストーリーテリングとしての映像表現はまだまだといったところだ。MVらしい映像は、物語を表象するうえではダイジェストのように映り、観客が感情移入する余地はあまり多くない。前述の映像美が状況や心情を投影しているかどうかは怪しい。映像のうつくしさはあくまで映像の美しさであって、映画それ自体のうつくしさではない。脚本自体は悪くないのだが、そのような脚本の映像化としての不備がある。 つまり、この監督にはキャラクタリスティックはあっても、作家性は欠けている。原作の映像化に留まっており(しかも原作通りかといえばそうではない)、映像の美しさを抜いてしまえば凡庸な大衆向け恋愛コンテンツに成り下がる危うい映画だ。
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