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2020年153本目は、韓国では社会にも大きな影響を与えるほどのベストセラーとなった『82年生まれ、キム・ジヨン』。 ------------------------------------------------------------ キム・ボラ監督の『はちどり』を見て感銘を受けた方には是非セットで鑑賞をお勧めしたい1本です。同じ時代を背景に女性が社会に受け入れられていくことの難しさが、「これでもか」と言わんばかりの苛烈さで描かれていきます。ジヨンの置かれた環境は平等な条件で働けない・産後に社会に復帰できない・家族内での立場は下…と右も左も敵ばかり。このレベルに達すると1人の人間として認められていないも同じで、ほぼ人格否定に等しいです。 ------------------------------------------------------------ しかもこのような考え方は韓国社会の伝統や習慣と強く結び付いているので、身近な人が考えを変えた程度では何ともならないのが根深い。それでも何とか目を逸らさずに見ていられるのは、彼女の周囲に心強い理解者がいてくれたからでしょう。主人公を演じるチョン・ユミの演技も素晴らしいのですが、ジヨンを支える夫役のコン・ユがやはり絶妙でした。 ------------------------------------------------------------ 原作に比べるとかなり「甘い」との批判もあるようですが、小説の出版後に韓国の女性進出に対する考えは緩和され、確かに実績を残しました。夫や家族の温かな反応は、こうした現在の社会を踏まえた「今の私たちならあの時の彼女を救える」という、前向きなメッセージなのだと思います。1982年が舞台の小説を2020年に映画化する意味がしっかりと感じられて、私にはとても納得できる結末でした。
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