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本国での公開から4年もたって日本に上陸した一作で、ファスベンダーが出世していなかったら、恐らく陽の目を浴びることは無かったでしょう。彼のファンしか見ない映画かもしれませんが、それではあまりにもったいないです。 この映画では主人公のミアと、それを客観的にスクリーンの外から見つめる観客との間に微妙な距離感が生じます。これはミアの考える理想と、我々の知る現実の隔たりそのものを象徴しており、ハンディカメラ感満載の撮影やビスタサイズを敢えて避けた手法も監督の意図的な演出だと思います。 彼女はロクデナシの母親と希望もない生活を送っていますが、コナーが家に来て以来、彼に父性とも恋心とも呼べる複雑な感情を抱きます。また、街角で見つけた『ダンサー募集』の広告に応募して仕事を見つけようとする。 ミア自身はこのどうしようもない生活がこれで少しは変わるんじゃないか、終わるんじゃないかという期待を抱いているけれど、はたから見ている我々にはそれが彼女の思い込みや勘違いに基づくものだとわかってしまうだけに、益々いたたまれない気持ちにさせられます。 15歳の少女を主人公にどこまでも容赦のない映画なのですが、だからこそ最後にミアが下した決断がこれ以上ない説得力を持って感じられます。インディペンデント系の作品にも関わらず、メジャーと張り合える十分な実力の一作です。
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