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【高級幕の内映画】 コメディもラブロマンスも、友情も家族愛も、インド映画らしいダンスも、勧善懲悪もある。加えて、テクニカルな伏線回収に脳がアハ体験連発、映画を締めるジャーナリズム要素もある。満腹間違いなし、これぞ映画の高級幕の内弁当! ◆概要 インドで興行収入歴代ナンバーワンを記録する大ヒットとなったコメディドラマ。出演は「ダンガル」のアミール・カーンら。 ◆ストーリー インドのエリート理系大学が舞台。型破りな自由人のランチョーとその同部屋となった2人が引き起こす騒動を描きながら、行方不明になったランチョーを探すミステリー仕立ての10年後の物語が同時進行で描かれる。 ◆感想 色んな要素が詰まった一本。コメディもラブロマンスも、落涙ものの友情物語も、家族愛の物語も、インド映画らしいダンスも、そして分かりやすい勧善懲悪もある。加えて、五月雨式に飛び込んでくる伏線回収の数にアハ体験して、インドの実情を伝えるジャーナリズム要素もある。満腹間違いなし、これぞ映画の幕の内弁当、な一本。 ◆コメディ 全体に満遍なく散りばめられたコメディ要素が弁当のふりかけのように、食べやすく(見やすく)してくれている。サイレンサーの“ゴーカン”スピーチは観客以上に笑い転げたし、スプーンの“お小水”感電、“友達が落第だと心が痛む。一位だと余計痛む”も面白かった。個人的には学長の顔芸レベルな怒り顔もツボだった笑。終始そんなバカ笑いやクス笑いで飽きずに見られる。 ◆ラブロマンス 洋画なら濃厚なディープキスからお互いの服を獣のように脱がせ合うシーンがゴロゴロある中、ランチョーとピアが一切触れ合うことなく、ラストでのキスシーンをアラウンド(2人の周りをカメラがグルグル回る)で頂点に持っていく演出の無垢さがなんとなくお国柄。いつか自分も訪れたインドで、テレビを家族その他大勢で仲良く見ていたあの文化が、安心して見られるこの映画の品の良さに繋がっていたように思った。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆友情・家族愛 ラージューの父を救った後の2人の涙のハグに思わずもらい泣き。自殺未遂したラージューへの献身な2人の介護にももらい泣き。お節介ながら真摯に友達の将来を見据え、導くランチョーとそれに続く2人。ファルハーンが父から認められるシーンも、ラージューが採用を勝ち取るシーンもとても良かった。そして何よりラストの再会のシーンも(ビンタ張るのはビックリしたけど笑)熱かった。ピア姉の出産をその家族のみならず、ランチョーや学生達でこぞって手助けしていくのも、やはりお国柄というか、他人とも家族のように接するインドの文化や雰囲気が垣間見えたように思った。 ◆ジャーナリズム “世界で最も自殺者が多い”という劇中のランチョーの台詞。それを裏付けるかのような、劇中での同級生の死と、ラージューの自殺未遂。そもそもこの映画で全体的に、余分な繊細さがなく、ある意味短絡で、ある意味ストレートな物語の展開と感情の描写を感じていた。それを肯定も否定もするつもりはないんだけど、ある意味やっぱりそのストレートさがどこか文化的に自殺数にも寄与しているのでは、そんな事を感じながら見てました。 ◆伏線回収 まあ贅沢なほどの伏線回収の数。スプーンの“お小水”感電のような小さなものから、2人がランチョーに向けたパンツ一丁での王への敬意、ランチョーの本名とサイレンサーとの関係のような大きなものまでオンパレード。後半、大規模な花火大会の大型仕掛け花火を見てるかのような、あれもこれも繋がって目の前で打ち上がる伏線花火に、もうスタンディングオベーションでした。 ◆ filmarksで高得点なのでずっと気になってた映画、終わってみれば大納得でした。インドダンスも豊富で楽しい気分になれたし、涙もある、まるで喜怒哀楽の中枢を全て刺激されるような贅沢な映画でした。満腹満足!
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