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リドリー・スコット監督がこれでもかと言わんばかりの豪華キャストを集め、軽率な行動から地獄の底に叩き落とされる男の行く末を描いたサスペンスです。その手加減のないやり口たるや見ていて本気で可哀想になってしまうのですが、劇中でマイケル・ファスベンダーには何度も引き返すポイントがあったはずなんです。 それが隠喩やちょっとしたセリフの端々に感じとれる一方、根幹となる部分を全く具体的に説明しようとしないため、全体として玄人向けのわかりにくい映画になってしまいました。これは明らかに監督の意図するところなのでしょうが、万人受けする面白い1本とはとても言えないです。 終盤、藁にもすがる思いで助けを求めようと電話をかけるファスベンダーに対し、幹部が長い説教を垂れます。このシーンからもわかるように本作は聖書の考えに基づいた寓話であり、『プロメテウス』や『エクソダス』などリドリー・スコットの近年の作品に頻繁に登場する主張で、齢80を迎えた彼だからこそ描ける世界観なのかもしれません。とは言え脚本を書いたコーマック・マッカーシーがもともとこういう話が好きなだけなのかもしれませんが。
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