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C・S・ルイスの児童文学「ナルニア国物語」の第3作目に当たる「朝びらき丸 東の海へ」を、マイケル・アプテッド監督が映画化した2010年のアメリカ映画 ・ ペベンシー兄妹は大嫌いな従兄のユースチスの家に預けられるが、壁に掛かった帆船ドーン・トレダー号の絵の中に吸い込まれ、再びナルニアの国へ。兄妹は、親友のカスピアン王子とネズミ戦士のリーピチープと再会を果たし、ナルニアの東の果てへと再び冒険の旅に出ることになるが、行く手にはさまざまな困難が待ち受けていた…。 ・ 前2作を監督したアンドリュー・アダムソンはプロデューサーとなり、製作・配給がウォルト・ディズニーから20世紀フォックスになった。こういうシリーズもので、製作サイドの都合により作品に影響が出るのは悲劇だが、特に劇的な悪影響はなく、しっかりシリーズを継承していた。 ・ 最近は古典映画ばかり観ていて、「映画は人間が作るんだから、CGなんていらない」なんて思っていたけど、こういうファンタジーを観ると、「不可能を可能にした技術は素晴らしい。なんて夢があるんだ」なんて思ってしまう。まあ、原作は50年代に書かれた古典だけどね。現代ファンタジーの傑作が「ハリー・ポッター」なら、古典ファンタジーの傑作は「指輪物語」と「ナルニア国物語」でしょ。 ・ 冒頭のナルニアに行くまでは、シリーズ3作目ということであっさりしている。ハリーがホグワーツに向かう時と同じように、主人公たちがナルニアに行くと胸がときめく。冒険が始まる予感。昔からファンタジーで一番胸が高鳴るのは冒頭だった。まるで恋をしてるかのように、ファンタジーの世界に酔いしれてしまう。 ・ キャストも代わらず引き継いでいるけど、ベン・バーンズ、ジョーン・ヘンリー、スキャンダー・ケインズなど、シリーズで脚光を浴びた俳優ばかり。アスランの声のリーアム・ニーソンやリーピチープの声のサイモン・ペグなどの実力派俳優が支えているのも好ましい。 ・ ナルニア国物語が素晴らしいのは、主人公が入れ代わっていくところ。冒険で成長する子供たち。成長して大人になるとナルニアには行けなくなる。この設定は寂しいけど、ファンタジーとして最高の設定だと思う。それでも寂しい読者のために、ちゃんと過去の主人公も登場させる展開にする所が、C・S・ルイスの優しさ。 ・ 7部作ということで、最後の作品をスクリーンで観れるのはいつの日か気が遠くなるけど、こういった時代を選ばない名作ファンタジーは、何歳になって観たとしても、変わらぬドキドキを与えてくれるだろう。ファンタジー好きな人は、ぜひナルニア国に行ってみてもらいたい。 ・ アスランがキリストのメタファーであるように、キリスト教の信徒伝道者であったC・S・ルイスが、キリスト教用語を使わずに、子供たちにキリスト教を理解させる物語でもある。日本人には言われないと気づかないぐらいだから問題ないけど、そういう視点で観るのも面白いんじゃないかな。
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