
星ゆたか

My Missing Valentine
Avg 3.5
2022.7.16 WOWOWの映画工房 斎藤工*板谷由夏さんお薦め作品。 【七夕バレンタインデー】 “消えた情(人)節” 情人節と書いて、バレンタインデーの意味。画面ではこの(人)が消えて “情 節”と表示、内容を示唆。 織姫と彦星が再会する日。台湾では8月4日に町をあげて恋人同士、特別な時を過ごす。 郵便局で働くシヤオチーは、子供の頃からいつでもワンテンポ早く行動する性格だが。気がつけば恋人もいなく30を過ぎて、職場の若くて可愛いい後輩に自虐的に振る舞い! また別のオールドミスの先輩には考えたくない未来の自分を?思案する日々。 そんな時たまたま通りがかった公園で、ハンサムな無料ダンス体操コーチ・ウェンセンに声をかけられた。そしてあれよあれよと彼のアプローチで‥‥ 町のバレンタイン・コンテストに一緒に参加する約束までの仲に。 前半はこの二人の恋話がウキウキムードで進められる一方で、毎日郵便局に手紙を投函するために、わざわざ彼女の窓口にやってくるバス運転手のグアタイを“ちらりちらり”を挟んで見せてゆく。 後半は開巻の陽に焼けたシャオチーが交番に、《失った一日》を届け出する不思議な描写があるように。 ここからその謎解きのタイムリープの展開となる。 劇中素敵な言葉がある。『人生とはたくさんの記憶のパズル、お互い相手の記憶に刻まれたら最高だね。』 グアタイはシャオチーとは反対に‥‥ いつでもワンテンポ遅い性格。 毎日郵便局に便りを、別の町の郵便局の保安箱宛に出すために、外の投函口でなく窓口に来るのは彼女に逢いたい気持ち一筋だから。 ただただ彼の正に“ど純情”過ぎる、しかし愛する人を不幸にする相手には猛然と立ち向かう強さ故の行動の裏返し。 それには訳がある。彼らは幼い頃出会っていた。彼女はそのことに気づいてない。彼の両親が亡くなる大きなバス事故に一緒に乗り合わせ、負傷した二人は同じ病院で治療したのである。幸い彼女の方は軽症でよく彼のベットの側で励ましてくれたのであった。退院後何回か文通をし、その後は関係も途切れていたが 彼の方は忘れてなかった。そして成人後また彼の運転するバスで彼女を“急ブレーキの顔合わせ”で見つけ、郵便局に通うことになったのである。 この辺の幼い頃の命の恩人とその後再び深い関係になるのは。あの「千と千尋の神隠し」(01)の川の精ハクと千尋の間柄のようだ。 タイムリープはあの失った一日を、遡って描かれる。 ハンサムで理想の恋人ウェンセンは、話によると身寄りのない施設育ちで。IT事業で成功した今は、その施設の心臓移植の必要な幼い子供のために、お金をいつもの寄付以上に必要と言っていた。しかしこれはまったくの嘘で、ある時ウェンセンを一人乗りあわせたバスの中に、彼から金を同じ手術費用として巻き上げ上げられた、別の女性と柄の悪いその極道の兄らの連中に、金を倍以上返すよう脅される現場に遭遇する。その他にもマンションから彼の奥さんと見られる女性に見送られる場面も。 そんな裏事情をシャオチーは知らず、グアタイの視線で時間を戻しつつ見せてゆく手法だ。 同じような一つの出来ごと、同じ時間を別の人物の視点でズラシナガラ見せていった成功例の作品に、内田けんじ監督の邦画「運命じゃない人」(04)があった。 そしてあのバレンタインデーの朝。 シャオチーを乗せたバスが、運転手のグアタイを除き周りの人間の時が止まる。バスを降りて様子を見てみると目の前の全ての人間、乗り物が移動中の静止画の如く止まっていた。 そこでグアタイは道先にあった別のバスの運転手をおろし、そのバスで一日秘密の場所、海岸に出向きシャオチーと素敵なバレンタインデーをおくる。彼女が開巻陽に焼けていた訳がそこにあった。写真を撮りいい思い出に。幸福の瞬間を永遠に止めたい心情の結晶だ。 その帰り道不思議に一人だけ動いている人間をバスに乗せた。なんと十数年前に失踪したシャオチーの父親ではないか。こんなことは彼にとってこれが二度目だという。彼が言うには毎日人は、時間を数秒だけ早かったり遅かったりする。それが20年続けば一日分の利息がつく。それがこの止まった一日だという。だからその利息分、一日多い人もいれば少ない人もいると。 この父親はあの失踪の日自分は死ぬつもりだったという。家族の中で重要視されてなかったから。 人が家で失くしものをして気付かないのと同じように。あの日も今日のようだったと。 あれから自分は世捨て人になったとも。だから家にはもう帰らない。動かぬ娘の頭を撫でながら、バスを降りて迎えにきた同じ世捨て人のバイクに乗り去っていった。 そしてあの偽物ウェンセンと殴り合い、負傷した顔面のグアタイはこの恋に終止符を打つべき最後の手紙の投函に、シャオチーの窓口へ。『ありがとう、さようなら』と。 その後郵便局を出た所で、彼女の父親のことずけ彼女にあげる“豆花”を買おうと、渡り進んだ道を戻ろうとして、疾走してきた車に跳ねられっ‥‥‥‥‥。 それから一年。あの毎日投函していた保管箱のある郵便局に移動申請して働くシャオチー。彼からの便りを待ち続けていた。 ♪自分を愛そう あなたを愛する人がいるから 空を見上げて両手を目の前にかざす 自分の言葉に驚き その冗談のネタが 私だと分かれば良かった♪(ビージーズの「ジョーク」 彼のハイファイボイスが良く合う) シャオチーが涙、グアタイが笑い涙、そして私も幸せ涙💧いい映画でした。