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2021.8.29.059 ネタバレあり 1969年、学生運動が盛んだった日本。東大全共闘と三島由紀夫が言葉と情熱で”殴り合った“時のことをドキュメンタリーにしたもの。 学生運動について詳しく知らないため、予備知識を入れて鑑賞。学生運動は、もともと学生が大学に対しての不満をぶつける程度だったものが、次第に政治的思想を帯び、過激になっていったのだとか。東大の学生運動組織である“東大全共闘”は、当時保守派の小説家として活躍し、“楯の会”という保守派組織まで作っていた三島由紀夫を東大900番教室へと招く。全共闘メンバー1000人を相手に討論するために単身乗り込んでくる三島。「暴行受けるんじゃないの?」とちょっとソワソワしながら観たわけですが、三島の語り口調は厳しいものではなく、ユーモアを交え、相手の論理矛盾を指摘したり揚げ足を取ったりするものでなかったため、割と和やかなムードだった。途中から登場した、東大全共闘随一の論客と評される芥(赤ちゃんを抱っこしており独特の雰囲気を持つ青年。現在も劇作家、演出家、俳優として活躍中。世にも奇妙な物語“海ガメのスープ”は名作)と、激しい討論をするが、芥は観念論で何が言いたいか非常にわかりづらかった。思考が現実と乖離しているというか。建設的でない論理展開にも三島はちゃんとついていってるのがすごかった。頭のいい人の哲学的・観念的な話、さっぱりわからん(笑)途中会場から飛び入り参加した学生が「社会的諸関係ってのが存在して、そこからどう意識、論理を展開するかが重要だ。芥みたいなこと言ってると東大全共闘の名が廃れるぜ」的なこと言って、会場から拍手が起こった時、自分が感じていた違和感は間違いじゃなかったと安心した(笑)芥の論理は、この場に相応しくないというか、土俵が違ったんだろうな。芥の話は、これはこれでじっくり聴いてみたい気もするが(後で晩年の芥氏のインタビューを見たけど、何を言ってるのかさっぱりだった(笑))。 さて、解説等を聞いていて、かろうじてついていけるような感じでしたが、東大全共闘は思想としては“反米愛国”らしく、三島と相容れない部分はあるが、日本を良くすると言った方向性は同じだったそうな。この1年後、三島は自衛隊駐屯地に乗り込み、憲法改正のためのクーデターを起こすよう呼びかけたが失敗。切腹して果てるという衝撃の最期を迎える。三島は陽明学の徒であったという話もあるし、それを考えると、あのような最期にも頷けるような気がする。
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