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dreamer

dreamer

3 years ago

4.5


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La Dolce Vita

Movies ・ 1960

Avg 3.3

この映画「甘い生活」は、壮大な風格を持った作品だ。 撮影が特に大がかりだというのではない。 内容が、3時間という長さからさえも、はみ出しそうなほど、中身がたっぷり詰まっていて、一度観ただけでは、十分理解できたという気にはなれないくらい、豊だからだ。 それは、優れた長編小説を読んでいるような感銘を受けるのだ。 この映画の監督は、「道」や「青春群像」や「サテリコン」などのフェデリコ・フェリーニだ。 そして、これらの作品で、断片的に、あるいはこじんまりと、まとまった形で提示されている問題が、この映画では力いっぱい、叩きつけるように投げ出されている。 それは、一言で言えば、発展の方向を見失っている現代の人間たちが、どんな具合に堕落しつつあるか、という事だ。 主人公のマルチェロは、作家を志して田舎からローマへ出て来た青年だ。 しかし、多分、才能はないのだろう。 今は、暴露記事専門の新聞記者になっている。 彼が追いかける事件は、キリストの像をヘリコプターにぶら下げて、町の上を運ぶという、カトリックの教会の馬鹿げた宣伝ぶりだったり、マリア様を見たという子供の妄想に狂喜して、どしゃ降りの雨の中を右往左往して、死人まで出す愚かな大衆の信仰ぶりだったり、アメリカからやって来たスターたちの乱行や、上流社会のパーティーのバカバカしさ、不道徳さなどだ。 その乱行は徹底していて、素人がストリップをやったり、いつも男娼をはべらしていたり、乱痴気騒ぎの馬鹿騒ぎをしたり。 しかも、そういう退廃的な風俗の中に、主人公自身、すっぽり首までつかってしまっていて、どうにも身動きができないのだ。 金持ちの娘と寝るにも、わざわざ町で娼婦を拾って、そのアパートの汚い地下室へ行き、そこで金持ちの娘と情事をするという具合なのだ。 しかし、そういう愚劣な生活はただ、彼らの心を益々救い難い空虚さに落とし込んでいくだけで、ゾッとするほど寂しく、落ち着かない。 享楽の場面と、幻滅の場面との繰り返しが、素晴らしく皮肉が効いていて、知的な詩に満ちている。 マルチェロに扮するのは、名優のマルチェロ・マストロヤンニで、他にアヌーク・エーメやアニタ・エクバーグ、アラン・キュニーなど、いずれも味のある、良い演技をしていると思う。