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【白黒つけられない映画】 命懸けのファッションバトル。その意味で斬新だし、そのバトルにクルエラの生い立ちを巧みに掛け合わせた脚本が素晴らしい。悪に染まるも真っ直ぐで“白黒つけられない”クルエラや、愛らしいキャラクターたちにも注目。 ◆概要 ディズニーアニメ「101匹わんちゃん」に登場した悪役クルエラの誕生秘話。2021年5月27日劇場公開、5月28日Disney+配信。 出演:「ラ・ラ・ランド」エマ・ストーン、「美女と野獣」エマ・トンプソン、「キングスマン」シリーズ マーク・ストロング 監督:「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」クレイグ・ギレスピー ◆ストーリー 70年代のロンドン。デザイナーを志す少女エステラは、カリスマ的ファッションデザイナーのバロネスと出会い、運命を大きく変えることとなる。夢と希望にあふれた若きエステラが、なぜ狂気に満ちたクルエラとなったのか。その秘密が明らかにされる。 ◆トリビア ○原作の『101匹わんちゃん』は、1996年に『101』としてすでに実写映画化を果たしており、2000年には続編『102』が製作された。両作にクルエラ役で出演したグレン・クローズは、本作で製作総指揮に名を連ねている。(https://news.merumo.ne.jp/article/genre/10767719) ○ 劇中では、アカデミー賞受賞歴を持つコスチューム・デザイナーのジェニー・ビーヴァンが手掛けた衣装が使われている。(https://www.cinemacafe.net/article/2021/05/20/72900.html) ◆ ◆以下ネタバレレビュー ◆ ◆ファッションバトル 映画の大半はコレ。「ココ・シャネル」「ファントム・スレッド」「ネオン・デーモン」にも見たファッションに対する女の狂気が、ディズニー映画の柔らかフィルターで血の流れない見やすい作りに。エステラが冒頭迷い込んだファッションショーしかり、煌びやかなドレスがいくつも登場する華やかな映像が続く。その中で一転、サナギのスタッツから大量の蛾(?)が飛び出す展開には悪い意味で鳥肌立ちまくりだった。 ◆脚本 産みの母親から育ての母親を殺され、その産みの親からエステラという存在を殺されたクルエラ。一時は世に順応すべく教育されたサイコの子が、母親ごと世から抹消され、まさにサイコ以外の何者でもないクルエラとして生まれ変わる。クルエラを如何に悪の化身として描くかのアウトプットを、最大限に引き出した脚本だと思う。またそのサイコ母を母と知らずに親子のファッションバトルを延々繰り返す訳だから、さすがのディズニー、その意味でもよくできた脚本だと思った。Wikipediaには脚本家の名前が6人連ねてあった通り、それだけ練られたものなのだと思う。 ◆キャラクター 本作鑑賞前は、話のスジ的に「ジョーカー」レベルのダークさを想像するも、ディズニーならでは、可愛らしいキャラクターたちがそう見せない。文句を言いながらクルエラを手伝うジャスパーとホーレスは窃盗だけでなくバンドまで出来てしまう器用さ。そしてウインクが何気に全場面で大活躍。ネズミ姿での死んだふりや、牢獄に鍵を届けにいくあたり、もう愛くるしくて仕方なかった笑。 ◆色 髪の色は白黒のクルエラ。身に纏う衣装も基本は黒のみで、エルエラになる時だけあの印象的な赤い髪に。母親であるバロネスは部下たちには白黒の服しか着ることを許さなかった訳で、モノクロとカラーの色分けがキャラクター分け、もっと言えば親子の縁のようなものを時には繋げて、時には隔てる表現にもなっていたと思う。もっと言えば、家宝の赤いペンダントや、クルエラがバロネスのパーティで初登場した赤いドレス、ラストの自信たっぷりなクルエラの鮮烈な赤のリップも含め、モノクロの世界での赤をポイントポイントで印象的に使う映画表現があったと思う。
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