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性癖にささる。 異国の地を美しく描きだし、まるでベトナムの商家家庭にホームステイするような気持ちでベトナムを見た。なかなか覗けない世界だからこそ、映画作品というより美術作品というかんじ。青々とした木々、美しい彩色の建造物、彩り豊かな家庭料理、時おり姿を現す動物、永遠に高い音を響かせる鳥。その光景の美しさ、そして他国から見たときの物珍しさを、監督も理解していたのだろう。前半で力一杯ベトナム美を堪能させ、後半で物語をひと息に展開させる。少女にフォーカスして、女性となる姿を鮮烈に描きだす構成が見事。観了後、フランスとの共同制作と知り納得。美しいわけだ。 . 冒頭の、建物入り口から部屋までの長回しカメラワークで、あっという間に引き込まれた。パパイヤの実を落とした口から白い樹液が滴る様はエロティックながら、少女がキラキラとした瞳で見つめており内包的。 . アジア映画の特徴か、それとも文化の違いなのか。BGMとして流れる音楽が、どれも親しみのないリズムや音色で威圧的。どのような気持ちで見ているのが正解なのかわからなくて混乱する。それも、異国映画という感じがして魅力的。 . ひとり親の少女が故郷を離れて、商家の侍女として汗を流す。楽な仕事ではないけれど、悪いばかりではなくて、少女なりの楽しみのなかで生きている。その心の美しさが、相対的な幸福に結実する。 この物語のなかで、少女だけが、絶対的に幸福なのだ。
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