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まず。 難解な作品というのはひたすらシンプルに「要は」という風に観ていくと読み取りやすいという傾向がある気がするので、そのように読み取っていくことにする。 そして本作の肝になるのは「アニメーション」か、「映画」か。という部分。 アニメーションに関しては僕は表現自体があまり好きではない。そういう意味でアニメーションが好きという人にはオススメな作品だと思う。 ただ、本作が「映画的」かというと僕は違うと思う。 まず褒める点として、そりゃあ作画は圧倒的だと思う。表現がキツくなっていく後半よりも冒頭の日常のシーンはとても安心して観ていられる。 芦田愛菜、富司純子の演技もまた素晴らしいと思った。 ただし、ここから問題で、まさに映画であるか、アニメーションであるかという部分で本作もテーマと同じように分岐というか分裂というか。 分かれていってしまう。 この圧倒的な画力と、一部声優陣の比較的棒読みのセリフ。そしてその喋ることに関してもあまり良いセリフが書かれているとは思えなかった。 哲学的問答もそうだし、日常会話においても、それらがストーリー的にリンクしていないのに同じ温度で語られている為に退屈になってしまっている感は強い。 この物語の難解さは意図されたもので、そもそもセリフや人物の動きで物語を語ろうという意思が渡辺歩監督にはハナからないのだと思う。 だからこそ、自慢のこの作画力や、アニメーションとしての話法のみで2時間の映画を語り切ろうとしている。 そしてそれが僕には大変に乱暴に思えるのだ。 アニメーション映画として考えた時。 誰かが言っていたが、新海誠のような映画を期待していたら宮崎駿がいて、押井守もいて、庵野秀明や今敏もいた、という感じは言い得て妙というか。 ただ、やっぱりアニメーションに特化した要素としてはそれは「ぶち上がる」要素かもしれないけれど、僕にはパッチワークにしか見えなかった。 アニメーションを映画として成立させる上では、やはり声を担当する声優陣の力量はとても重要だと思う。 どうしても絵に描かれた人物の表情だけでは人物の感情は現れない。 そういう意味で、蒼井優、稲垣吾郎、森崎ウィンなどの俳優陣の声優としての力量があまりに乏しい。 恐らく本作にある意味で似ているのはテレンス・マリック監督の「ツリー・オブ・ライフ」だが、こちらはブラッド・ピット、ショーン・ペンなどの俳優の力量によってあの難解さを映画としての魅力に仕上げていたのに対してどうしても目劣りしてしまう。 ストーリーが難解。しかしシンプルに読み取れば比較的平板なエコロジー思想であったり生命礼讃であることは容易に読み取れるが、それらのテーマとこの圧倒的は作画力というのがリンクしているかというと、僕はそうでないと思う。 だから「なんだかわからないけど凄い」という感想しかなくその後に感じるのは「なんだか有難いお説教を聞かされた」という後味の悪さであって、主人公・琉花のこの夏休みの体験であったり、その後の彼女の人生であったり、父と母の問題はあまりに俗っぽい問題であったりとモヤモヤする。 そういう意味で、「映画を観た」という楽しさは感じられなかった。だから、僕は少なくともアニメーション映画はよくわからないというのが本音。
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