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直近で劇場公開された新作をレビュー、今回取り上げるのは『ベイビーティース』。若草物語のリメイクで幸薄な三女を演じたエリザ・スカンレンが主演を務めます。 ------------------------------------------------------------ 末期の病に苦しむ少女が、偶然出会ったドラッグディーラーと恋に落ち残り少ない人生を輝かせていく…という、まるで昔日本で流行ったケータイ小説のようなストーリーです。ところが主人公カップルのみならず女子高生ミラの両親にもスポットを当てて大部分の時間を割いたり、最後の最後までミラがならず者のモーゼスに愛されていたのかが分からないなど、かなり一線を画すタッチになっています。 ------------------------------------------------------------ 難病ものと言えば主人公が弱っていく姿を時間の進行と共に描くのがお決まりですが、本作ではミラの姿はほぼ変わりません。そして、カラフルな色を画面に散りばめながら、彼女の刹那的・刺激的な思い出が断片的に綴られていくんですね。これまでの映画がアルバムのページをめくっていく見せ方だったのに対し、『ベイビーティース』はプレイリストの中でもお気に入りのムービーだけを再生するような見せ方になっています。 ------------------------------------------------------------ そうした思い出の中に、ミラが死に向かっているという事実が、どんどん覆い尽くされて消えていくような気がする。ところがある時突然、ふっとミラはこの世を去ってしまって、ギャップが凄まじい喪失感を呼びます。この辺りの構成や演出が見事でして、クセはかなり強いながらも、米レビューサイトで高評価を得る理由はちょっと分かる気がしました。
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