Comment
しじらみ

しじらみ

3 years ago

4.0


content

The Card Counter

Movies ・ 2021

Avg 3.1

面白かった。こういう新作を映画館で見られる幸せ。 硬派な切り返し、地に足付いた横移動、安心感のある背中を追ったショット、寝苦しそうに体を捩るオスカー・アイザックを真上から捉える宙ぶらりんの不安感、ある時はPTSDを喚起するまるでアトラクションのようなライド感に満ちた悪夢としての、またある時は記録フィルムのような刑務所描写。そして、画面いっぱいに広げられる真っ白いシーツ。これは"白い部屋"映画の系譜なのだ。ウィレム・デフォーの家まで白くする。しかし、その白さは全く主張されず、寧ろ最小限の照明で如何に室内を暗くしていくかに重きを置いているように感じた。フライシャーでもファスビンダーでもなく、ジェームズ・グレイ。これはノワール。ファム・ファタールとしての ティファニー・ハディッシュ、或いはタイ・シェリダン。 黒沢清が『旅のおわり世界のはじまり』でどうしてもスマホの画面を見せたくなかった(大意)と言っていたように、映画において忌み嫌われるスマホ画面を、最も効果的に使った好例としても記憶に残しておきたい。取り返しの付かないメッセージを受け取り動揺したままポーカーに参戦しつつも途中離脱し、"白い"部屋で決心したオスカー・アイザックが、ドアを開けたまま部屋を出ていき車を走らせるまでの流れももの凄く格好良い。 『君は放課後インソムニア』よりずっとウブなロマンスも素敵。イルミネーションが美しいトンネルでたまたま触れただけを装ってもいるような不器用に手を繋ぐカットがあるからこそ、ラストカットが感動的なのである。