
てっぺい

Look Back
Avg 3.9
Jun 28, 2024.
【足し引きする映画】 チェーンソーマンの原作者が描いた、京アニ事件の追悼として話題になった短編読切を映像化。足した表現と引いた部分がとにかく絶妙で、原作愛に映画愛にも溢れた、原作映像化の大成功例。 ◆トリビア 〇京本と出会った後、藤野が田舎道を走って帰るシーンは、演じた河合優美が最も好きな場面。演じる上で、あの感動を下回りたくないと思いながら、「何か限定しない声を出そう」ということを考えたという。(https://www.msn.com/ja-jp/news/entertainment/河合優実-フィクションなんて作っている場合なんだろうか-と葛藤-劇場アニメ-ルックバック-とシンクロする感情とは/ar-BB1p1UoU) 〇藤野が男性にキックをする場面では、台本には「うらア!!」とだけ書いてあり、何回もトライしがうまくいかなかったという河合。監督が自らブースに入り、「うらア~~~ッ!」と、150%の力で藤野の叫びを実演した姿に、監督としてすごく信頼できたという。(https://www.msn.com/ja-jp/news/entertainment/河合優実-フィクションなんて作っている場合なんだろうか-と葛藤-劇場アニメ-ルックバック-とシンクロする感情とは/ar-BB1p1UoU) ○ 演じた京本について吉田美月喜は「監督から『地声に引きこもりの要素を感じる』と衝撃的なことを言われました」と明かすと、押山監督は「この子ネガティブそうだぞという印象があった。飾らない感じを声から感じた」とその採用理由を説明した。(https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1717299664) ○ アニメーション化にあたり押山監督は「大変だったのは、圧倒的な物量の作画。普段のアニメのデザインではやらないような、ニュアンスで絵が変わるタッチの表現に踏み込んだので、多くのアニメーションとは違う異質なものに仕上がっている気がします」とこだわりを口にした。(https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1717299664) ○ 原作者は本作鑑賞後、「この人(押井監督)は命を懸けて描いているんだ!」と感じたという。藤野が京本の部屋の前に来たとき、4コマを落とした床のタイルの色が、一枚一枚きちんと違うなど、「自分にはこんなことできなかった」という仕掛けがいっぱいあったと話す。(https://natalie.mu/eiga/news/579081) ◆概要 【原作】 「チェンソーマン」藤本タツキによる同名読み切り漫画(2021年に「ジャンプ+」で発表、「このマンガがすごい!2022」オトコ編第1位作品) 【脚本・監督】 「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」押山清高 【声の出演】 河合優実、吉田美月喜(それぞれ声優初挑戦) 【主題歌】 「Light song」by haruka nakamura うた : urara 【公開】2024年6月28日 【上映時間】58分 ◆ストーリー 学生新聞で4コマ漫画を連載し、クラスメイトからも称賛されている小学4年生の藤野。そんなある日、先生から、同学年の不登校の生徒・京本の描いた4コマ漫画を新聞に載せたいと告げられる。自分の才能に自信を抱く藤野と、引きこもりで学校にも来られない京本。正反対な2人の少女は、漫画へのひたむきな思いでつながっていく。しかし、ある時、すべてを打ち砕く出来事が起こる。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆足し算 満月の夜、町の俯瞰から藤野の部屋に映像が移り、夜中でも黙々と漫画を描く彼女の“背中”にタイトルが乗る。このタイトルバックは原作の表紙に忠実でありながら、この月のように、映画製作陣によって足される部分がある事がこの冒頭で記される。まるで製作陣が息を吹き込むように、四コママンガの「ファーストキス」に映像が足され、漫画では見えない部分が映像化されていく。秀逸だったのは藤野が雨の中家路を弾んで帰るシーン。漫画では見開きの大きな一コマで描かれていた藤野の恍惚とした様が、映像では息づかいと、笑顔ともなんとも取れないあの絶妙な表情のまま弾む藤野がなんとも愛らしい。(ちなみに京本の声色も山形弁もイメージにベストマッチ)細かく言えば、連載が決まった際に藤野の部屋にあったポスターは映画「バタフライ・エフェクト」。原作では部屋の中まで描かれない小さなコマも、過去に戻って幼馴染の運命を変えようとする映画のポスターを置く、という工夫を加えてしまう徹底ぶり。総じて、原作に忠実でかつ、余白の部分を世界観を壊さず巧みに広げた、原作の映像化としての大成功例だと思った。 ◆キック 藤野が暴漢にキックをお見舞いするシーン。原作者が「自分の中にある消化できなかったものを、無理やり消化する為にできた作品」と語る、例の事件に対しておそらく最も描きたかったものであり、監督もアフレコの際にブースまで入って演技指導をしたという熱の入るシーン。つまり本作で最も原作に忠実でなければならないシーンが、藤野と暴漢の向きが逆だったのに驚いた。原作では、常に能動的で主導的な藤野が右に、その逆の京本が左にいる構図が明確化されている(唯一京本が大学進学を告げたシーンは京本が右)。あえて考察するなら、原作では見開きのインパクト上、左に配置するしかなかった藤野を、その必要のない劇場版でその左右の原理を整理した、監督のあえての原作愛に自分には思えた。 ◆ラスト 一部で考察されていた、“「背中を見て」の四コマ著者名の「京本」が他のそれと筆跡が違う”ため、本当の筆者が誰なのか、映像化により補完される事でそれが明らかになる点にも注目だったラスト。結果、映像では京本が描くよう見せており、あえて物語を複雑化しない方向に舵を切っていた。そしてその四コマを窓に貼り、藤野がまたデスクに向かうバックでエンドロールへ。ここでは逆に、原作にあったディカプリオ映画へのオマージュは引き算されており、やはり物語をシンプルにする舵が切られていた(oasisの“Don't look back in anger”ネタも引き算されていたが、別の形で表現されていたという記事もあったが自分は見つけられず)。続くエンドロールでは、黙々とデスクに向かう藤野の窓の外が暗くなり、やがて深夜、藤野が明かりを消して部屋を出る、本作最後の足し算が。映画のはじめと終わりを漫画に向かう藤野の“バック”で共通させる映画らしい演出でかつ、それは漫画に打ち込み続ける藤野に休息を与える、映像クリエイターの監督ならではの藤野への労いでもあったように思えた。 ◆関連作品 ○「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」('19) 原作のラストのコマにジャケットが描かれるほど、本作はこの作品へのオマージュを明示している。Netflix配信中。 ◆評価(2024年6月28日時点) Filmarks:★×4.4 Yahoo!検索:★×4.2 映画.com:★×5.0 引用元 https://eiga.com/movie/101249/